第一話 魔王召喚
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者なる存在の討伐を命令し送り出したのだが、返って来た報告は勇者の”討伐”ではなく魔王軍の”全滅”だった。
しかも最悪なことにそのことが人間達の士気を上げることに繋がってしまった。
勇者が現れて約二年。ついに勇者は三人の仲間と共に大陸の最南端に位置する魔王城へと攻め込んできたのだった。
世界を制しかけた魔族の長たる魔王サタン。そして、彼を討伐せんと攻め込んできた勇者の力はほぼ互角。だが、二人の力が互角でも勇者側には三人もの仲間がいる。
幹部も、そして仲間達も次々と敗れているなか一人で彼の者達を相手した魔王サタンに勝機など当然あるはずも無い。
凄まじい戦いの後を残すかのように魔王城のありとあらゆるところに空いた大穴。そこから差し込む淡い月光が勇者の聖剣を怪しく輝かせた時、勇者の突き出した一撃が魔王の胸を貫いた。
瞬間胸に込み上げてきたのは今までに経験したことのない凄まじい痛みと、身体全体を焼くような暑さだった。
悲鳴を上げるよりも先に血液が口へと逆流。吐血したせいで何一つとして言葉を発することは出来ない。
ただ出来るのは、部下達を討伐しあまつさえ魔王たる自分を打ち倒した勇者たる存在を視界に収めるだけである。
そして、皮肉なことに彼がその生の中で目にした物はソレで終わりだ。
遠のく意識の中、参加を逃れた同族の安否を気遣いながら意識を手放し、気付けばこの場だったのだ。
正直、何かの冗談としか思えない。
「どういうことだ? 俺は、死んだんじゃないのか?」
確実なる死が自分の命を奪った。そこまでの記憶は残っている。しかし、それ以上の記憶がまるでない。
辺りを見回してみても視界に入るのは青空の下、微風のふく絶景とも言える光景。見慣れた石畳に敷き詰められた魔王城の謁見の間とはまるでかけ離れたものだ。
さらに言えば、身体についた傷がある程度回復している気がする。
完全には回復してはいないが、目が当てられないほどでは無いくらいには治っている。
この状況にまるで理解が追い付かない。
サタンは額を抑えて嘆息するが
「ちょっと、アンタッ! さっきから私を無視するなんてどういうことよッ!」
金切り声にも近い声を上げて癇癪を起す目の前の少女に、サタンは意識をそちらに戻すことを強要される。
「さっきから心ここにあらずみたいな状態で何をボーっとしてんのよ? 良いから私の質問に答えなさいよ!」
「質問……? 何が?」
「だから、アンタは一体何なのかって聞いてるじゃないッ!」
「何なのかって、そんなもの俺の姿を見れば一目瞭然だろ……」
少女の質問にさも当たり前のように答えたサタン。だが、その際ふと視界に入った自分の手を見て顔を驚愕に染
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