偶像の黄昏
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アート的な反抗そのものである。常に正義は勝者に伴い、復讐は敗者に付随する。闘いとは反動の闘争の繰り返しであり、終わる事は〈能動の彼岸の形骸化〉を意味するのである。
「フランも…戦う!」
「その意気よ!」
霊夢はお祓い棒を構え、彼女達は対峙していた。今に戦火は昇り、記憶の彼方に結末が仕舞われるだろう。如何にして帰結を求むるか、それは誰にも解らない。しかしこれだけ言える事としては、これから始まる『戦争』は窮屈な理論を叩き上げる為に行われる醜い剣と剣との交わり合いの一過にのみ値する、と言う純朴な下劣性であった。その泥濘の中から彼女たちは光り輝く意思を見出す。
「――私たちは…どんな困難も壊してみせるわ!」
◆◆◆
「核熱…ニュークリアフュージョン」
お空は細々とした、且つ重厚感を付随する声で技を宣言する。神より与えられた予言を聴衆に宣告する予言者エレミヤの如し力強さの声明の後に、彼女の多角柱の中で強烈なエネルギー生産が起こる。その力を抽出して霊夢たちに解き放つのだ。恐ろしい砲塔から出でし赤い龍が霊夢たちに牙を剥いて襲い掛かり、広大な空間に於いてその爆発音はドームに誇張して共鳴した。
「ふん、だから何よ!――夢符、二重結界!」
彼女も自信にありふれた声で口述すると、目の前に現れた結界が真紅の龍を打ち消した。結界に弾かれるエネルギーは熾烈を極め、砲弾に直撃して四肢分裂する人間の死をそのまま直接描くように弾け去ったのだ。
するとIDOLAは結界を張った直後の霊夢に向けて力を込めた光線を放つ。指し伸びた一本の腕の指先から放たれる純白の剣は、今に彼女を劈こうとした。反動で動けない彼女の目の前に迫る白き蟒蛇。近づく恐怖に彼女はハッとして青ざめたが、力を結界に使った存在に気付く事が出来ても身体は反応しなかった。…この時ほど彼女は身を呪った事は無いだろう。そして心身一元論を唱える愚者に反感を覚えた。身勝手な推論を盾に論説を走る哲学者気取りの連中に、今のこの状況は分かるまい――機械の中の幽霊?その通り、彼女は機械の中の幽霊だ。カテゴリー錯誤をも超え、デカルト二元論の信仰者に心変わりさせる魂の体現を、彼女に自覚させたのだ。
「危ないよっ!」
咄嗟にフランはすぐに彼女を自分と共に押し倒し、攻撃を回避させた。光線は二人の真上を通り過ぎて、その空間を構成する壁に直撃した。ぎこちない鋼鉄の壁から人筋の煙が立ち昇っている。
「アレに当たっていたら今頃…」
「…随分と余裕だな、侵入者ども!」
お空は倒れている二人に向かって多角柱を向けなおし、再び大声で宣告した。また多角柱にエネルギーが濃縮され、その迸りは熱として煙を噴き出した。幾重にも放たれる負の怨念は白煙の中に尽く消え失せ、神秘主義をも打ち砕く現実主義
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