偶像の黄昏
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りるのは避けたくなると思われる、不気味さを漂わせる階段。何年も使われてないように見せるもので、埃が溜まり、蜘蛛の巣があちこちに張られている。金属製の手摺は錆びており、何の物すら把握させないほど腐ったゴミが散乱している。作業員専用フロアから続く階段は恐怖そのものである。現実にも地獄はあるのだ、と現実主義者にこの光景を見せることがあったのならば、忽ち思想を変えるだろう。――これは地獄だ、己の信ずる故の獄ではなく、『現世の獄』として。
それを前にして二人は固まったが、数秒ばかりを経た後に霊夢が決意して開口した。
「…行くわよ」
急な階段を急いで降り、その後をしっかりとフランがついていった。何も見えない闇の中に歩む様子は、手探りで栄光を掴まんとする英雄の背であった。
◆◆◆
「…にとり、さっきからコールセンターにC区駅の商業施設で働く従業員たちから通報が相次いでいるのよ。なんでも巫女に似た顔をした女性と不思議な羽を生やした少女が本来の立ち入り禁止区域を破って入ったらしいわ」
「流石は巫女、情報が早い」
博士は巫女の情報収集能力を褒めた。彼女たちは会社の休憩スペースに位置する、窓に沿った机に族する椅子に座っており、その展望は街の全体を見渡せる。設置されている自動販売機からアイスコーヒー二つを持ってきたパチュリーに、博士は軽く会釈しながら其れを口にした。甘く冷たいアイスコーヒーの味わいが染みる。少し落ち着いてから軽く息を吐いた博士は、予見を口述する。
「あそこの地下にはGENESIS:IDOLAがある。誰から聞いたのか、それを破壊するつもりだろう」
「結構余裕そうね」
「そりゃあそうさ。PYT兵を配置しておいたからな」
にとりは鼻を高くした。そしてもう一口、アイスコーヒーを飲みながら景色の遠くを眺めた。休憩スペースに置かれているテレビの中では、霊夢の行方を必死に追っているニュースが流れており、マスコミもC区駅での騒動で何かに勘づいたようであった。
◆◆◆
真っ暗な空間で暗証番号入力の装置だけがブルーライトを光らせていた。階段の先にあった深淵にひっそりと佇む暗証番号入力機。1から9までの数字が振られた九つのボタンが正方形に収まる形で設置されている。そのボタンとボタンの間に僅か眠る溝から放たれる青光が闇を照らすのだ。
彼女達はその古ぼけた青の前で、地図を片手に暗証番号を入力した彼女たちの前に、忽ち闇を破壊する閃光を募ったフロアが顕現する。LEDライトを用いた電光が天井で耀く通路が、その闇の世界を覆い隠す。預言者の前に現る神のような静寂と光陰は、二人を痛く感激させた。
「確かこうね」
彼女はらくらく突破し、中へと入る。光の通路を歩む先には巨大な空洞が広がっており、不気味な鋼鉄の穹窿の中心に
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