偶像の黄昏
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ンは心配そうに聞くと、霊夢は地図の片隅に何か書いてあるのが分かった。それは紛れもない暗証番号そのものであった。…同時に聞き忘れた自分の浅はかさを呪った。単純気質が何時までも抜けない自己知己の愚の厩を燃やし、理解の牆壁を乗り越えようとする事も、彼女の同時の澪標であった。
「あの研究者、なかなかやるわね。…そうと決まれば」
霊夢は早速、地下2Fへエスカレーターで下る。電車が停車する音や発車する音が響き渡り、その喧騒は人々の声に埋没していく。一般客に紛れて地下2Fに降り立つ2人。食料品売り場に彼女たちはいた。買い物客で溢れかえり、外の疎らな様子とは段違いの混雑を指し示す。確認するところ幾つかの監視カメラが設置されていたが、この大衆に埋もれる変装者を見抜くのは困難だろう。
「問題はここからよ。…何処かに作業員用のドアがあるみたいね」
彼女は地図を元にそこへ歩く。フランもその後ろをぺったりとくっついたかの如く歩いている。天井の空気清浄機がかなりの効き目を誇り、常に新鮮な空気が提供されているのが、逆に彼女を不安にさせるのだ。それは一種の抑圧的反動の形成、乃至は未来の可能態に於ける霊的心性に依る高貴的な〈中庸〉が、その場その時に霊夢たちの心を揺さぶるのだ。人工的な明晰夢を観る心地であり、仮想現実に錯綜しているようであったのだ。その空気が、余りにも人間的な空気が、新鮮さを及ぼす故に違和感として心性に直接揺さぶりをかける――この事実を彼女たちは把握出来なかった。
地図に描かれたドアの前に辿り着く二人は、何処と無く恐怖に陥っていた。関係者以外立ち入り禁止、と簡潔な警告が書いてある鉄の扉でありながら、所々が凹んでいて年季を思わせる。何重にもある傷が見た者に扉の過去を鑑みさせ、深淵に続く道の入口と魅せるのだ。諧謔的でありながら、本質的な悪の内在する光の反射が凹みや傷を目立たせる。
「ここに行くわ。…フラン、ここからは本来立ち入ってはいけない場所だから、なるべく速足でいくわよ」
「うん」
2人は一気に突入し、中で商品の準備などをしていた従業員たちは一驚に馳せながら、彼女たちの後を目で追っていた。速足で駆ける不審者は地図を頼りに道筋を追う。備え付けの監視カメラにはその容姿が完全に映し出されていたが、それがかの指名手配犯であろう事は誰も予測しなかった。
作業員専用フロアは品物に際して行われる準備をする為の場所であり、様々な店の商品がケースに入れられて積まれていた。薄暗い蛍光灯の光が無機質な鉄の空間を照らし、先程まで居た売り場とは対称を為すほど暗い場所であった。拘泥の差とは、正にこの事を指し示していた。
霊夢は赤ペンで書きくわえられた「極秘の階段」を見つける。立ち入り禁止フロアの奥深く、それこそ誰もいない場所にてそれは存在した。従業員も降
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