巻ノ百七 授かった術その六
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「見事じゃ、まさかそこまで至るとはな」
「思われなかったですか」
「若しやとは思っていたが」
「それでもですか」
「よくやった」
我が子に労いの言葉も贈った。
「ではその術でな」
「時が来れば」
「ことを為せ、その術があればな」
「どの様なこともですか」
「出来るであろう」
こう言うのだった。
「必ず果たせ」
「それでは」
「わしもその時まで生きるつもりじゃが」
ここでだ、昌幸はこんなことも言った。
「しかし人の生き死にはわからぬ」
「だからですな」
「その時におらねばな」
「拙者がですか」
「お主だけでもじゃ」
それでもというのだ。
「ことを果たせ」
「わかり申した、しかしそれがしだけでは」
「気付いておったか」
「はい、それがしは名が知られておりませぬ」
どうしてもとだ、幸村は昌幸の己のことを話した。
「天下に広くは、いえ」
「天下では知る者も多い、お主のことはな」
「そして十勇士達も」
「天下の士は知っておる」
確かにというのだ。
「それは間違いない、しかしな」
「茶々様とその周りの方々は」
「知られぬ」
幸村、彼のことはというのだ。
「わしのことは知っておられるがな」
「それ故にですな」
「わしの話は聞いて頂けるが」
「お主の話はじゃ」
「どうしてもですな」
「聞かれぬ」
そうだというのだ。
「そこが問題じゃ」
「やはりそうですか」
「大野殿や片桐殿はご存知じゃ」
豊臣家の家老である彼等はというのだ。
「お主のこともな」
「大阪にもよく入っておりましたし」
「だからな」
それでというのだ。
「お二方はご存知じゃ」
「それはよいことですが」
「お二方、特に大野修理殿は茶々様に逆らえぬ」
「他の方には是非を言われても」
「茶々様には言えぬのじゃ」
「だからですな」
「そこが弱みになってな」
それでというのだ。
「茶々様がお主がこれぞと思って言ってもじゃ」
「それを茶々様が聞かれず」
「大野殿はその茶々様を止められぬ」
「わしなら茶々様もお止め出来るがのう」
「そこが問題ですか」
「どうにもな」
こう言うのだった。
「だからわしがおるべきじゃが」
「それでもですな」
「果たしてどうなるか」
「だから今はですか」
「身を養っておる」
歳を考えてそうしているというのだ。
「時まで生きられる様にな」
「左様でしたか」
「そういうことじゃ、それではな」
「はい、今もですな」
「身を慎んでじゃ」
そしてというのだ。
「長生き出来る様にしておる」
「そうなりますか」
「左様じゃ」
「そうですか」
「何としてもな、しかしな」
「そのことはですな」
「わしだけではない」
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