第三章
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「それこそ星の数程ありますよ」
「よく言われることですけれどね」
「それに出会いは無数にあります」
こうも言うシュトックハウゼンだった。
「それこそ幾らでも」
「じゃあ僕にもですか」
「そうです。ですから」
「落ち込むことはなく」
「どうしても落ち込みますけれどね」
失恋が痛手であることはシュトックハウゼンも否定しない。もっと言えば否定できないことだった。彼も経験があることだからそれはどうしてもだった。
そのうえでだ。彼は言うのだった。
「しかしそれでもです」
「前を向いてですか」
「そうです。上を向いて」
落ち込まずにだ。そうしてくれというのだ。
「新しい鯉を見つけて下さいね」
「そのことも思ってこのツアーに参加しましたけれどね」
「なら余計に」
シュトックハウゼンは身を乗り出してシュターゼンに話す。
「見つけて下さい」
「そうします。ところで」
「はい、何でしょうか」
「いえ、このトルコですけれど」
周囲を見回してだ。シュターゼンはシュトックハウゼンにあらためて話した。その話すことは。
「あれですね。ヨーロッパ人が多いと思ったら」
「日本人ですか」
「物凄く多いですね」
こう言うのだった。黒髪に彫の浅い顔の彼等を見て。見れば彼等は誰もがにこにことしてツアーで歩き回っている。ツアーなのはシュターゼン達と同じだ。だが。
数が違っていた。かなり多くてだ。こう言うのだった。
「ドイツ人の倍はいるんじゃ」
「日本人は旅行が好きですからね」
「あっ、そうなんですか」
「はい、日本人の趣味の一つですよ」
だからだ。彼等は多いというのだ。
「トルコだけじゃなくてあちこちにいますよ」
「そういえばボンにもいつもかなりの数の日本人が来ていますね」
「ドイツにも観光で来ますから」
「何でもノイシュバンシュタイン城が人気らしいですね」
バイエルン国王ルートヴィヒ二世が築かせた城だ。白く壮麗な外観とフランスの影響の強い見事な内装で知られている。そして何よりもワーグナーで飾られている。
その城のことはシュターゼンも知っている。それで言うのだった。
「あの城はいつも日本人で一杯だとか」
「日本人だけじゃないですけれどね」
「それでもなんですか」
「かなり多いです」
このことは紛れもない事実だというのだ。
「もうベルリンにもハンブルグにもです」
「ボンやバイエルンだけではなくて」
「そうです。ドイツ中で日本人は旅行に来ていますよ」
「そうしてお金を落としてくれてるんですね」
「その通りです。いいお客さんですよ」
旅行を仕事にしている者としてだ。シュトックハウゼンは
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