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美女は何処にでも
第一章
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                           美女は何処にでも
 失恋した。それでだ。
 彼、ハインリヒ=シュターゼンは祖国ドイツを後にした。そして向かった先は。
 トルコだった。そこで参加しているツアーと共に旅をして失恋の傷を癒すつもりだった。その彼にだ。
 案内役のゲルハルト=シュトックハウゼンがだ。こう尋ねてきた。丁度レストランで昼食となっていた。そこでトルコの羊料理を食べながらだ。相席になったシュターゼンに尋ねたのだ。
「あの、シュターゼンさんですね」
「はい」
「御仕事は確か」
「学生です」
 大学生だ。ボンの大学で法律を学んでいる。
「アルバイトで貯めた貯金でこのツアーに参加しました」
「そうですね」
 シュトックハウゼンは自分よりも若いその金髪を奇麗に後ろに撫でつけた青い目の逞しい長身の若者の返事を聞いて頷いた。シュターゼンは一八〇ある彼よりもまだ五センチ程高い。
 その彼の返事を聞いてだ。まずは頷いたシュトックハウゼンだった。しかしだ。
 彼はまだシュターゼンに問うた。今度の話題は。
「それでどうしてこのツアーに。よかったらお話してみませんか?」
「ちょっと。気分転換に」
「気分転換でトルコまで」
「はい、来ました」
 そうしたというのだ。
「実は失恋しまして」
「失恋したんですか」
「彼女にね。ふられました」
 デザートのトルコアイス、異様に伸びるその独特のアイスをスプーンで食べながらだ。シュターゼンは微妙な笑みになってそのうえで答えた。
「向こうに好きな人ができたそうで」
「それで、ですか」
「はい、ふられました」
 こうシュトックハウゼンに話す。
「正直言ってこたえました」
「それで失恋の傷を癒す為に」
「はい」
 その為にだというのだ。
「今ここに来ています」
「そうですか。実は私もですね」
「シュトックハウゼンさんもですか」
「今結婚している相手がいますがその前に交際していた相手とです」
 どうなったとだ。彼は一旦その緑の目を閉じてからシュターゼンのその青い目を見て述べた。
「失恋に至りました」
「そうなのですか」
「はい、失恋しました」
 そうなったというのだ。
「性格の不一致で」
「シュトックハウゼンさんはそこからですか」
「そうなんですよ。いや、相手がいましても」
 そうした相手ができてもだというのだ。
「恋愛っていうのはどうなるかわかりませんね」
「そうですね。僕も」
 シュターゼンは遠い目になって。それで寂しい笑みになって話した。
「彼女ができた時は嬉しかったですが」
「それでもですね」
「はい、交際してみると」

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