第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【Aパート 】
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者か王家直属の騎士くらいなもの。
ただ、あいつらにとって凱達の正体など、実の所どうでもよかった。何者であろうとも関係ない。
殺してしまえ。すぐに殺せ。傭兵と野盗の鉄則を極端化させれば、結局のところ同じなのだ。
「答えろ。ユナヴィールの村をこんなにしたのも……この少女の母親を殺したのもお前たちか!?」
兵士たちは「くっくっく」と薄ら笑いを浮かべながら返答した。
「そうだ。ユナヴィールはアルサスを手っ取り早く支配する為に『見せしめ』として、我々が焼き払った!」
「もっとも……その娘の母親を殺したのは『ドナルベイン』様だがな!」
――――勇者に激しい怒りが立ち込める!
瞬間、偉丈夫の指揮官が剣を天高く掲げると、それを合図に包囲網を完成させる。
恐怖は、絶望は、人を根底から支配する最も効率のいい方法だ。
逆らえば殺す。怒り狂ったところで殺す。外部の人間と接触すれば即殺す。関与した人間さえも皆殺す。
閉ざされた世界が今のブリューヌ。それを認知させるために、この娘の母親は殺されたのだろう。
「ここは偉大なる魔王テナルディエ閣下が手中の『逆星の丘』アルサス!貴様等よそ者が足を踏み入れていいところではない!」
将と思わしき騎兵が剣を持ち上げると、それを合図に歩兵たちが抜刀して臨戦態勢に入る。
「少し数が多いみたいね」
対して傭兵の彼女もまた、刃の対翼を広げていた。ティッタは少女を抱きかかえて、幼い存在を勇気つける。
目測にして――その数50人は下らない。それが一輪二輪と続く。
今が『夜』ならば、『闇』に紛れて『死』を避けることもできたかもしれないが、まだ日が沈みきっていない夕刻では、逃亡を諦めざるを得ない。
「ここアルサスに来た事を後悔して……死!!!!「後悔するのは貴様等だ!」」
指揮官が剣を下ろすと、一斉に凱達の首を討ち取ろうとした瞬間―――――
ドン!!!!!
ひとりの歩兵が宙を舞い、崩れかけている民家の壁面へ叩き付けられる。
「……一体何が!?」
鈍器で叩き付けられたような――妙な快音。
臨戦状態の兵士たちが一瞬にして、その表情をこわばらせる。
目前にいた長身の青年が、いつの間にか『銀閃』を抜き放っていた。
本来なら斬撃であるはず――『見えざる鞘』を刃に纏ったまま。
手を柄に取る。刀身を放つ。腕を振るう。そんな一連の動作が知覚できぬほど、すさまじい『神速』の一撃が、迫ってきた一番手の兵を、まるでうっとうしい木の葉を祓うように叩きのめしたのだ。
「本当なら、戦い自体避けたかったが――今回ばかりはそうはいかないぜ!」
純粋な怒り。凱の憤怒に呼応するかのように、アリファール
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