第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【Aパート 】
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きたのは不幸中の幸いだろう。
やがて娘……少女は意識を取り戻し、母親の最後を目の当たりしたことを、凱は承知の上で事情を訪ねる。
「アルサスを占領した兵隊さんたちは、新しくお城から派遣された騎士様を来るたびに殺し、気が付いたら……誰も来なくなりました」
無辜の民を、あの地獄のようなアルサスに残したまま。
「最後の丘と信じていたアルサスは……王様に見捨てられました」
「見捨て……られた?」
有り得ないと――フィグネリアは思った。
内乱罪を引き起こした地点でテナルディエ達に討伐隊が差し向けられる。逆賊を討ち取るべく、王に忠誠を誓う騎士が任務を遂行するはずだ。
ブリューヌ最強と謳われる騎士団――ナヴァール騎士団さえも手出しできないとなると、もう答えは一つしかない。
アルサスも――オードも――テリトアールも――アニエスも――本当に見捨てられた。
それどころか、既に王都ニースも陥落していると考えるのが自然だ。
つまり――ブリューヌ全体は既に現王制の法が一切通用しない世界が広がっている事を意味していた。
「……今は『お母さん』を寝かさないと……」
まだ『弔う』という言葉さえ知らない少女の言葉と行動に、皆は胸を激しく痛めた。
凱は惨状を生み出した存在に怒りを抱き――
フィーネは、覆せぬ現実に凍てついた刃を秘めて――
ティッタは少女にとって最後の『孝行』を見て――
手が小さく、非力で幼いこの少女には、弔う為に土を掘り起こすことさえできない。
見かねて、凱はそっと手を添えた。
「あたしにも……手伝わせて」
「……手伝わせてくれ」
静かに嘆願する凱の言葉に少女は、瞳に溜めていた涙を晴らしたのだった。
その時――――ゴトリという音がした。
誰だ?そう察して後ろを向く。他にも村の生き残りがいるのかと思ったが、そうではない。
むしろ、生き残りどころか、『村をこんなにした連中』と思わしき存在が現れたのだった。
黒ずくめの殺し屋らしき人物が――
鍛えられた巨躯の傭兵らしき人物が――
眼帯をしている山賊のような人物が――
武装した連中が一斉に凱達を取り囲んだ。開口一番に問い詰める。
「貴様ら……このあたりでは見ない顔だな?」
そう言われて、ティッタの外套の袖を掴んでいる少女が恐怖に怯える。
指揮官と思わしき雰囲気を放つ男が、おいしい獲物を見つけた獣の眼で、抜き身状態の剣を凱達に向けた。
「お前たちは一体何者だ?」
静かな声で凱は問う。
「テナルディエ閣下の配下と言ったら……どうする?」
既にその事を予想していたのか、テナルディエの配下と知ってなお驚かない。
既に魔王の領土と化したアルサスに足をあえて踏み入れるような人間は、血縁関係
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