第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【Aパート 】
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かう――心に小さな火が灯る言葉を。
(オレが襲ったアルサスの連中も……勇気を抱いて、ヴォルンの帰還を諦めなかったんだろうな)
始めから、アルサスを焼き払うこと自体出来なかったのだ。
それを理解すると、あの時下した父上の命令がいかに矛盾しているかはっきりわかる。
兵三千を率いてアルサスを焼き払え。だが、既に灯した勇気の火を焼き払うことなど、何人たりともできはしない。
当たり前だ。火を火で焼き払うなど矛盾に等しい。
(そうだ……初めからこのブリューヌ内乱は『矛盾』していたんだ)
強者が弱者を喰らい続ける。例えそれが摂理だとしても、繰り返す『輪廻』としては『矛盾』しているのだ。
弱肉強食……そのような獣の論理に。
「分かりました。覚えておきます」
それだけ、たった一言口にすると、ザイアンは馬の首をひるがえして、セレスタの町へ繰り出していった。
主要都市セレスタより少し離れたところにある、人口二百たらずの小さな半農の村。名はユナヴィール。
ほんの数か月前までは、何の変哲もない村だったという。
――ある日突然、怖い兵隊さんたちがやってきて、アルサスを占領しました。
そのような証言を得られたのは、様々な意味で貴重と思えた。この証言は、何より発見された『生存者』からもたらされたものだからだ。
証人の正体は、かつてムオジネルによるアニエス侵攻戦のおりに、ティグル率いる銀の流星軍への『見せしめ』の為に、父親を処刑された女の子だった。
かつてオルメア平原の幕舎にて、難民たちへ糧食を配膳していたティッタには、見おぼえのある少女だった。
――帰る家もない……希望もない……――
――だけど、まだ生きている。ならば歩き続けろ――
――流星の丘アルサス……そこに行けば、『英雄』が!最後の砦があるはずだ!――
――そこなら、きっと私たちを助けてくれるはず!――
――あきらめるな!『英雄』は俺達『星屑』を見捨てたりはしない!――
だが、現実は残酷を容赦なく突きつけた。
待ち構えていたのは『英雄』などではない。既に奪われた流星の丘へ居すわるのは――
――――――――『魔王』だった。
それから始まった、地獄のような奴隷の日々。まだムオジネルに『牧』としてくべられたほうが、よほど楽だったのだろうか。
ある時、銀の逆星軍の監視が緩んだとき、この母子は希望を捨てずに脱走を試みた。
だが、母親は娘を逃がす為に身代わりとなり、娘はここユナヴィールまで逃げ墜ちたという。
所詮、10にも満たない女の足など、そう遠くへ逃げられるものではない。やがて力尽きる時が来る。
その時だった、ちょうどザイアンと別れた際に、この女の子を発見で
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