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シベリアンハイキング
タルクセナート
駅にて、納屋の中へ

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街の中心部に駅が有る。ほんの十数年前に出来た建物なので、無機質なコンクリートの箱形である。その駅の目の前の通りに、一件の小さな鍛冶屋があった。中に入ると60代位の老人がパイプを咥えて椅子に座っている。「鷹の爪用の研ぎ石をくれ」とユスフが一言告げる。渡された手紙に書いてあるのはそこまでの指示であった。その言葉を聞いた老人は「ああ、あんたか」と呟き、宿屋の時と同じ様にまた一通封筒を出した。ユスフは開封された形跡がないことを確認すると店を出た。直後、封筒を開け次の場所を確認する。これはいつもの党のやり方なのだが、そんなことを二回程繰り返した後、ユスフは最後に渡された手紙を確認すると、タルクセナートの街から離れた郊外へと歩いていった。そこは三件の住居用の木造の小屋と、高さにして三階建てと思われる納屋が二件有るだけである。不思議な事に小屋も納屋も人はおろか家畜の気配すらない。ユスフは再度渡された手紙を見る。その納屋の一つに入れと書いてある。重い戸を開ける。中はもぬけの殻で、藁も無いことから大分前に放棄されたと見える。納屋の中に数歩進んだ時である。「ルースの人よ、ようこそ」納屋の中に声が響いた。
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