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レーヴァティン
第二十三話 堺の街その八

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 英雄を見てだ、こう言ってきた。
「拙者に様がおありか」
「わかるか」
「気は拙者に向けられているでござる」
「それがわかってか」
「左様」
 英雄に確かな声で答えた。
「尋ねたでござるが」
「その通りだ、外の世界から来た侍がこの道場にいると聞いた」
「拙者のことに他ない」
 侍はすぐに答えた、面長で細く鋭い目をしている。唇は一文字で鼻は高い。黒髪を後ろで髷にしている。
「それは」
「やはりそうか」
「ふむ、どうやら貴殿も」
 小柄な老人も言ってきた、白髪の髷で口元には髭がある。胴と垂れの防具が剣道着によく似合っている。
「外から来たか」
「そうだ」
 英雄は老人の問いにも答えた。
「西の島からな」
「そしてその腰にある刀は」
「わかるか」
「天羽々斬」
 その名前を言った。
「まさに」
「知っている様だな」
「噂には聞いていたが」
「ここで見るとはか」
「思わなかった」
 到底というのだ。
「まさか」
「西の島にいてだ」
「デルフォイの神殿でか」
「抜いてきた」
「そしてこの島に来たか」
「来た理由はわかるな」
「西の島にいたこともある」 
 老人、束原流犀ははっきりと答えた。
「そしてじゃ」
「西の島のこともか」
「ある程度だが知っておる」
「デルフォイのこともか」
「うむ」
「そして一振りずつの剣と刀もか」
「知っておる、だが」
 英雄の腰にある天羽々斬を見てだ、束原は彼に言った。
「抜けんかった、わしにはな」
「そうか」
「しかし貴殿は抜いたな」
「だから持っている」
「そうじゃな、この世界を救うつもりか」
「最初は何をするのか一切わかっていなかった」
 今では遠い昔だ、久志と共に旅をしデルフォイで刀を抜きこの世界のことも学んだ。その日々を思い出しつつ束原に答えた。
「しかしわかってきた、この世界に来たなら俺もこの世界の住人だ」
「そしてじゃな」
「この世界にいるのなら」
 即ち住人ならというのだ。
「守りそしてだ」
「戦うか」
「救う」
 実際にというのだ。
「そうする」
「その心わかった」
 束原は英雄の言葉に確かな顔で答えた。
「ではな」
「こいつは外の世界から来たな」
 今は沈黙し自分達のやり取りを聞いている侍を観つつ束原に問うた。
「そうだな」
「そしてな」
「そうか、では話が早い」
「拙者も話を聞いていました」
 侍もここで口を開いた。
「以前からこの世界のこと、そして拙者自身のことを」
「そうか」
「この世界に来て長い間旅をしていました」
「俺の様にか」
「貴殿の旅とはまた違うでしょうが」
 それでもというのだ。
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