第50話 穂乃果と大地、交わされた約束
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人間のように生気を感じられなかった。
そんな少年相手に、窓越しから必死に声をかけるサイドポニーの女の子。少女もまた、少年と同い年くらいに見える。が、少女の頬を滝のように落ちる雫が二人の間に何かがあったことを物語っていた。
『───くん!!───くん!!おいていかないでよぉ!!』
少年の母親が仕事の都合で転勤してしまうのだろうか。
しかし、どれだけ必死に少女が泣き叫んでも少年はびくとも反応しない。それどころか、少女の声すら届いていないようにも見える。あまりにも凄惨な光景であった。
『こんどは、───が!───くんのことをまもるから!!だから!!だからいかないで!!───のこと……ひとりにしないで……』
『……』
それでも、少年は反応しなかった。
どうしようもない悲しみが、少女の心を支配していたのだろう。その悲痛な叫びを最後に、少女はそのまま泣き崩れてしまっていた。
見るに堪えない。
少年の母親はそう思ったのだろう。少年の母親と、泣き崩れる少女の母親は合図を交わし、静かに車の窓を閉めるのだった。
『まって!』
最後に少女は、叫んだ。
涙と涎と、鼻水でぐちゃぐちゃの顔を拭かず、思いを込めて叫んだ。
『……いつあえるの?』
『……』
無反応。
だけど、少年はゆっくりと口を開いた。慎重に、取りこぼさないようにゆっくりと。
『わかん、ない。いつ……か、また……あえる、よ?』
『……ほんと?』
『いま、まで……ごめ……ね?』
『ううん、やくそくだよ』
『……やく、そく?……うん、やく、そく』
蚊の鳴くような小さな声で、そう囁き合った。最後に見えた景色は、少女が差し出す小指に
少年がまじまじと見つめた後、震える小指を絡ませていた。そして、窓が閉まる直前……ほんの一瞬だけ、少年が笑みを浮かべていた景色。
───そして、俺は思い出した。
俺は確かに……誰かと、会う約束をしたことを。そしてそれは間違いなく、俺が幼少期にしたことを。俺が車の中で、真っ白な頭の中で確かに交わした誰かとの約束を。
それでもまだ、俺の靄は完全には晴れない。でも、道筋は見えた。霧のかかった真っ白な道路に、進むべき道筋が見えた。
「(……ほの、ちゃん?)」
頭にそうはっきりと出てきた、幼き頃の親友の呼び名。
嬉しかった。ただ純粋に嬉しかった。
「なぁ穂乃果」
「なぁに?」
「そいつの事、好きだったか?」
「え?う、う〜ん……」
俺の質問に、またいつものように頬
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