第50話 穂乃果と大地、交わされた約束
[6/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「いやぁー水族館楽しかったね!」
「あぁ……」
「また行こうね!!」
「あぁ……そうだな」
「むー、大くんさっきからずっと『あぁ……』ばっかり!!そんなに楽しく……なかった?」
口をとがらせて声色を暗くする穂乃果の声を聞いて我に返る。
「あ、あぁ違うって。そんなことない、楽しかったよ穂乃果。まぁ終始引っ張られっぱなしだったけど悪くない一日だった」
「ほんと!よかったー!!」
「誘ってくれて、さんきゅな」
「えっへへ〜!また誘うね!」
「今度はちゃんと連絡の一つくらいよこせよな」
雪穂へのお土産という名目で買った”ジンベイザメ”のぬいぐるみの入った袋を持ち直して、穂乃果はつぶやく。聞こえないふりをしていたつもりだったけど、心に引っかかるつぶやきだったために聞き逃す事ができなかった。
「……大くんとの約束、これで全部果たせたよ」
「え?穂乃果?全部ってどういうことだ?」
「なんでもないよ!ただの独り言!」
「いや、だけど……さ」
「いいの!!」
明らかに寂しげな顔してただろうが───とまではいかなくても、儚げにな表情を見せるものだからスルーなんてできるわけない。らしくない、といったところだろうか。
俺から手を離し、俺の影を踏むように前を進む。
執拗に影の頭を踏んづけているけど。気のせいだと思いたい。
「大地くん」
「?」
また、だ。
穂乃果はここ数日にわたって、俺の事をたまに大地と呼ぶようになった。どんな心境の変化なのかままならない。距離が縮まった証と捉えてもいいのだろうか?しかし───
「昔ね、私が小学生の時に、ある男の子と仲良くなったんだよ」
「え?あ、あぁーそうなんだ」
「その子はね、ある日私が怖い出来事に巻き込まれた時に私の事を助けてくれたんだ。本当はその子だって怖かったはずなのに、私の為に命までかけてくれたんだ」
「そ、それで?」
「その子とは離れ離れになった。でも、私は約束したんだ。”絶対またどこかで会える”って」
どくん、と。
心臓が大きく跳ね上がるのを自覚した。急に血液が心臓中心へと集まっているような気がして、手足がかじかむ。それは恐怖から生まれるものではない。俺の中で確信を得たような気がしたからだ。
───景色があった。
そこは車の中。
今でも母親が愛用しているキューブ型の自家用車だ。母親が運転するその助手席には一人の幼い少年の姿。見た目的に小学高学年くらいだろうか。茶色のやぼったい髪の上から痛々しい量の包帯を巻いて、無気力そうに俯いている。
無気力……というよりは植物
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ