第50話 穂乃果と大地、交わされた約束
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チュラルメイクしているだとか。
まるで彼氏とデート行く女の子の用意周到な光景だった。
もし仮に、大地が寝起きでなかったら確実に頬を染めてしどろもどろになっていただろう。間違いなく、冷静さを失っていただろう。
「朝ご飯作ったんだよー!さっきねー大くんお母さんに手伝ってもらってキッチン借りて作ったの!ほら見て見てー!」
そう言って彼女は立ち上がり、机の上に置いてあった皿にはこんがりときつね色に仕上がった食パンにバターとイチゴジャム、目玉焼きにサラダ、スープ、珈琲、と見ただけで食欲そそる朝食に大地は生唾を飲み込んだ。
しかし、大地は寝ぐせのついた頭をかきながらあくびをする。
夢かどうか、もう一度時計を確認して───現実を受け入れた。
「大くん……まだ眠いの?」
「……ケータイ取ってくれ」
女の子は文句の一つも零さず、「うん」とだけ言って同じく机の上のスマートフォンを、大地に渡す。電源を入れ、手慣れた指さばきで通話アプリを起動、数字三つを押して耳にあてる。機械音が3コールなった後───
「もしもし警察ですか?不法侵入です」
〜第50話 約束 〜
「大くんこれを見て」
「そ、それは!!」
非常に目を細めて汚物を触るように手に持った雑誌を見せつける。
一見それはただの参考書。世界史の表紙だ。どこにでもあるような世界史の参考書を彼女は───穂乃果はその表紙カバーを外す。
「な、なんだよそれは!」
「これはなに大くん……」
「し、知らない!!俺はそんなもの知らないぞ!!」
「大くんの机の上から二段目の引き出しの二重底の下に、参考書の表紙を被せて隠してあった」
「くっ……」
エロ本だ。揺るぎない俺の数少ない財産のひとつが、知られてはいけない人に渡ってしまい、未だ繋がりっぱなしのスマホを無意識に強気握りしめる。
スマホ越しに聞こえる男性の『もしもし!どうかされましたか!?もしもし!』という声が無造作に思えてくる。冷や汗が止まらず、滲み出る手汗で落とさないようにそのままスマホを耳にあてる。
「……すいません。人違いでした」
通話オフ。
抵抗したらまた何をされるかわからない。というか、何をしでかすのか想像できない。今の穂乃果はそういう目をしている。諦めついた俺を見て、蔑む様な目つきから冷めた目つきへと変える穂乃果だけど、幾分も心情の変化は見受けら
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