第五章
[8]前話
双方共に互角だった。それを見て言うのである。
「どっちも同じだけ売れておるわ」
「そうですか。それじゃあですね」
「大阪側も名古屋側も引き分けですか」
「そういうことですね」
「ああ。百貨店的にも成功じゃった」
フェスタを開催する側でもだ。そうだというのだ。
「本当によかったわ」
「じゃあ大阪城と名古屋城は互角ですか」
「通天閣と銀の柱もですか」
「それできつねうどんときし麺も」
「互角だったんですね」
「そうなるのう。どっちにしてもじゃ」
どうかとだ。主任はその報告を聞きながらまた話す。
「最初からどっちがええか悪いかなんてな」
「そんなのはないですか」
「大阪と名古屋、どっちがええか」
「それはないんですね」
「ないわ。一番は広島じゃ」
主任は広島人らしくこの場所が一番いいとした。
そしてそのうえでだ。こう言ったのである。
「けど大阪も名古屋もどっちもええけえ。優劣なんぞないわ」
「そうですね。まあ売り上げは凄いですし」
「またこのフェスタやればいいですね」
「来年辺りまた」
「やるけえ。優劣はないが競争はできるけえの」
だからだ。やるというのだ。
「これからもこれやるけえ」
「わかりました。じゃあ来年もこのフェスタやりましょう」
「大阪と名古屋の物産展」
「竜虎の対決」
「ああ。けれどあれじゃのう」
スタッフ達の言葉に頷きながらだ。主任はこんなことも言った。
「カープものう」
「ああ、カープですか」
「今年もですね」
「ちょっと」
「どうにかならんかのう。ああして元気でいられる連中が羨ましいわ」
野球のことについては主任は苦笑いになって首を傾げさせるのだった。フェスタは結局勝敗はつかなかった。だが大阪側も名古屋側も再び立ち上がってからこう言うのだった。
「来年や来年!」
「来年は決着をつけるぎゃ!」
「名古屋には来年勝つで!」
「大阪を叩きのめすぎゃ!」
相変わらずのテンションで怪気炎をあげていた。
「阪神来年日本一や!ドラゴンズがなんぼのもんじゃ!」
「中日三度目の日本一だぎゃ!阪神はカモにするがや!」
「大阪城は天下一の名城や!」
「名古屋城程立派なお城はないぎゃ!」
こう言い合いだ。挙句にはビリケン様やシャチホコを崇めて来年こそはと誓うのだった。こうして彼等の戦いは何時までも続くのだった。大阪城と名古屋城は来年も燃え上がるのだった。
天下一の城はどちらか 完
2012・6・29
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