―真紅の皇―
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った。
『……見たな?』
「万丈目……挨拶もなしに……」
『そんなことはいい! 次は勝つから特訓に付き合え!』
電話してきた相手は、先程までテレビの向こうにいた――もちろん放送は生放送ではなかったが、万丈目そのもので。明日香に誰から電話が来たかを語るまでもなく、彼女は電話先から聞こえてくる声に苦笑していて、電話を代わるように小さくジェスチャーしていた。いい加減に耳元が疲れてきた時に幸いだと、手早くPDAを明日香へと渡していた。
『おい、聞いて――』
「――デュエル。もう少しだったわね、万丈目くん」
『て、天上院くん!?』
「ええ、久しぶり」
俺に向かって怒鳴り散らしていた時とは全く違う万丈目の声をバックに、聞きなれた町の音が多少はBGMとして電話先から聞こえてきた。特訓に付き合え、などと言っていたが、本当にこの寮の近くまで来ているらしい。
『ど、どうして君が奴の電話に……いや、そんなことより! すまない天上院くん! 久々に君の声を聞いておきたいどころだが、今の弱いオレにそんな資格はない!』
「え、ええ……」
『だから待っていてくれ! キミに相応しい強い僕になった時、必ず迎えにいこう!』
――そうして明日香の話を何ら聞くことはなく、万丈目からの通話はあっさりと切れてしまう。ポカンとした表情の明日香から視線で今の状況の説明を求められるが、万丈目のやることなど説明できるものかと。
「勝った時じゃないと会いたくないってさ」
「うーん……なんとなく、分かった気はする……ような気もするわ」
要するに負けていては格好つかないという万丈目のプライドの話だが、あまり万丈目の内心を勝手に話すのもどうかと、多少以上にぼやかして明日香には説明しておくと。それでも半ば放心状態の明日香からPDAを受けとると、ひとまずそれは机の上に置いておくと。それからしばし明日香と世間話に興じた後、明日香は自らの部屋へと帰っていく。明日も早いのだと、明日は休みなこちらへと微妙に不満げな様子を見せる明日香を見送ると、そっとPDAを操作してあちらへ連絡を取ると。
「明日香は帰ったけど、来るか?」
『……そうさせてもらう』
……どうやら今日は、久々に徹夜を覚悟することになりそうだ。
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