少女
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「…私が携わったGENESISの名前は「GENESIS:IDOLA」と言ってだな…。…場所はC区駅の地下に存在する──C区駅はとてつもなく大きいが、その最深部…一般客は勿論、従業員も立ち入れない場所にある。……ちょっと待ってな」
かつての研究者は集会所のPCを起動させ、C区駅のフロアマップを簡潔に印刷する。そして持っていた赤ペンで記入を加えると、彼女に渡す。その地図はフロアマップで、階層別に地図が描かれていた。赤丸はその地図から外れた最深部に付けられた。そこまでの道筋が赤ペンでなぞられており、霊夢は侵入経路を完全に把握した。
「…この赤ペンで示された場所がGENESIS:IDOLAのある場所だ。また、この道筋が行くまでのルートだ。…あとこれを」
かつての研究者はハンドガンと数十発分の銃弾を彼女に渡した。
「…感謝するわ」
「俺はあの会社に裏切られた。…頼む、俺の仇をとってくれ」
そう言うと、周りの農民たちも頭を下げる。一同は霊夢を崇めるように願ったのだ。この残虐性が支配する世界を取り戻す、唯一の解放者。その力たるは無尽蔵で、彼らの希望の的となっている。元より彼女はそうした系譜の誕生なのかもしれない。理性が捉えかねない〈悄然とする蒼氓の魂〉が超自然の観念として、未来への畏怖と言う瓦斯の沈鬱を超克する。
「そうじゃ…!あの残虐非道な人間たちを…やっつけてくれ…!」
彼女は静かに頷いた。そこに彼女の全てが表されていたのである。恐怖が少しもないも言えば嘘になる。しかし彼女は歩むのだ、その壮絶なる戦いの太陽へと。…かつての研究者から貰ったフロアマップと拳銃および銃弾を懐に入れ、集会所を後にしようとする彼女は、その影を未来に照らした。
「…もういいのかい?」
「私はいいわ。善は急げ、悪い奴の退治はもっと急げ、よ」
「…霊夢さん、私…ここに残ります。もう力が限界に達しました──こんな弱々しい葦のような人間ですが、許してください」
仲間の告白に、既に外に出ていた霊夢は少し動揺した。しかし彼女はどうとでもないように振舞った。その防衛機制は、一種の創造的価値観の幕開けである。外界に行った存在から聞いた話を引用した別れの台詞を、その力強さから優しさを導いて言葉にした。
「──人間は一本の葦にすぎない。自然の中でもっとも弱いものであるのよ。だが、それは考える葦であるわ。これを押しつぶすには、全宇宙が武装する必要はないの。一吹きの蒸気、一滴の水だけで、殺すには十分。だけど、たとえ宇宙が押しつぶそうと、人間は彼を殺すものよりも尊いはずよ。なぜなら人間は自分が死ぬこと、宇宙が自分よりもまさっていることを知っているから。……今までお疲れ様ね、感謝するわ」
「…は、はい!」
仲間はそう言うと、
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