少女
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「奴隷はこんな目に遭わされてしまうんです…。──奴らは最低ですよ」
仲間は静かにそう言った。彼女も霊夢やフランと同様、PYT研究所に恨みを持っていたのだ。怒りが込み上げ、その沈黙を復讐の念に築くのだ。すると集会所に遅れて白衣を纏った、髪がボサボサで自己管理が余りなってない男が登場した。彼は右手で灰色のハンカチを持っており、汗かきな性分なのか頬や首元を拭いていた。目元には隈が出来ており、睡眠不足である事も容易に窺える。
「…遅かったのう。そうだ、あんた……この人を知ってるじゃろう?」
老婆に問われた男は、霊夢の姿とテレビの中の彼女を一致させた。すると突然ハッとしては驚き、急いでハンカチを上着のポケットに突っ込んだ。しかし汗は噴き出ること構い無し。この荒唐無稽さに、霊夢は内心微笑していた。
「…あんたは誰よ?」
「私はかつてPYT研究所でGENESISの研究と制作に携わったが人員調整でクビにされた哀れな研究者ですよ…」
絶望を込めた声で言ったが、彼女は「GENESIS」という言葉に興味を持った。この言葉の音韻一つ一つに過剰な反応を示す反射形態を作り上げていた霊夢にとって、この出会いは大切な意味を持っていることを悟るに時間は有さなかった。急いで体勢を立て直し、まるで来賓が来たかのように畏まって座り直した。先程までに馬鹿にしていた内心も全てタブラ=ラサに回帰させたのである。
「…あんた、GENESIS作成者?」
「携わった。それだけですよ。…あなたの知りたいことはあれだろう、GENESISの場所だろう?」
「―――大正解よ」
かつての研究者は予想を的中させる。ふと得意げになった男は、その僅かな自慢さと置かれた立場の境遇性を止揚し、再び感情をかき消した。残っているのは浅薄な表情だけである。
「GENESISって何…?…フラン、何にも分からないよ……」
フランは涙腺の跡を顔に描きながら、霊夢に問う。まだ少女は霊夢を抱きしめたままであり、余程離れたくないことが他者に認められるだろう。絶望を嚥む彼女の虚無性は、厭世性に若干擦り寄っていた。
「…あんたたちの能力を回収している機械よ。…それを壊せばあんたたちに力が戻ってくる」
「…本当!?」
「本当みたいよ。…ただ全部で5個ある上に、最後に中央のGENESISを破壊しないといけないみたいね。──めんどくさいシステムでしょ」
彼女はぶっきらぼうに言うと、かつての研究者は唐突に語りだした。恐らくは言いたくてウズウズしていたのだろう、一種の自己顕示的感情が簡単に見て取れるのは紛う方なき事実である。男は両手をポケットに突っ込み、一旦深呼吸してから話し出した。この言葉の部分部分が、霊夢たちにとっての大事な鍵となったのである
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