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TOHO FANTASY T
少女
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い事が霊夢は見てとった。彼女はそんな仲間を見ては、耳元で囁き呟くように言ったのである。

「…あんたも疲れたのね。…助けてくれてありがとう」

「いいえ、そんな事ないです……というよりも、私の方が足を引っ張っていましたけどね…はは……」

すると老爺は1人の少女の右手を握って連れてきた。痣は治っていたが、その跡が少しだけ残っている。今こそ綺麗な木綿を着ていたが、嘗てはボロ雑巾のような貧相な服を身に纏い、テナルディエ家に奉仕する少女コゼットに劣らぬ扱いを受けたのだろう。その痕跡に、背中から生える特徴的な翼──木の枝のような細長い骨格に八色の色彩が施された宝石が吊り下げられたもの──は、既に薄黒い染みが取り付き、埃がこびり付いていたであろうザラザラした表面が、その宝石の輝きを妨害する。目は死んでおり、その意志に渇望を見出すことは不可能に近かった。

「…れ、霊夢」

出会い頭、少女は小さな声で呟いた。…口を利いたのだ。それは信頼と希望が今までの中で最高に達し、眼の中に先の見える夢を込めて呟いた言葉であった。絶望の中に忽ち降ろされる光のアーチ。孤独の淋しさに震えていた少女は今、その出会いを果たしたのだ。

「…フラン」

霊夢もそんな少女を見据えて言った。その様相を鑑みた霊夢は、今まで彼女がどのような扱きを受けていたのか容易く想像がついた。同時に憐憫の思いが湧き、フランをただただ見据えている。

「霊夢…怖かったよう……」

フランはすぐに霊夢に抱きついた。奴隷としての恐怖感が和らぎ、甘えられたのだ。従属としての我が身の理解者に、そして信頼が持てる相手に…彼女はやっと出会えたのだ。内面的な思いが一気に弾ける。堰が切れたかのように涙が湧き出て、霊夢の胸元に温もりを作り上げる。

「…あんたも怖かったのね。……いいわ、私の膝元で泣いても」

霊夢は甘えて泣いている少女の頭を優しく撫でる。そして甘える少女を静かに抱擁した。フランはただ、その再会を泣いて喜んでいた。それ以上に測る事情は存在しなかった。

「…知り合いかのう?」

「…かつて同じ世界で暮らしていた仲間よ。…それにしてもフラン、その傷…誰から受けたのよ?」

「…パチュリー」

フランは鼻水の音を響かせながら、再び小さな声で答えた。少女は怖かった。今まで一緒に暮らしていた仲間に殴られ蹴られ、どうして自分がこんな目に会わなければいけなかったのか。

「アイツね……!…パチュリー……!」

彼女はPYT研究所で働く魔法使いに怒りと憎悪を覚えた。人はそこまで恨みを持てるのだろうか、彼女は初めてそんな感情を持った。自己を省察するのは今まで数度あったが、これ程までに客観的から見ることを大事に思えた瞬間は初めてであった。デカルト的認識論が、ここぞとばかり
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