少女
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が、決してそれらが明るみに出ることは無い。崖の下に〈記憶〉を落とすのだ──先に眠るコキュートスの檻は、専ら誰にも見られない。
「流石、立派なPYTの社員だ──そう言えばにとり、研究は進んでいるのか?」
「今現在、GENESIS細胞を1人の奴隷に移植させ、密室にて実験を継続しています。現状は何も様子が見られておりませんが、恐らくは期待通りの物になるかと思われます」
「…そうか、分かったぜ。後は神子がいない間、空いた隙までしっかりとGENESISの管理を頼む」
「その件についてはご安心下さい」
にとりは社長に頭を下げながら了承した。着ているスーツ服に多少の波が目立ち、皺が生まれる。その蒸れから少しの汗が出たが、気に留めることは無かった。
「…結構自信満々なんだな」
「はい。今現在、四台のGENESISの前にはPYT兵を派遣しています。警備には万全です」
「PYT兵?またお前の新作か?」
「ええ。PYT兵は幻想郷から連れてきた奴隷を選出したものです。それぞれにPDMの力を返還させた上でPDMに彼女たちの記憶を消す「erasure.exe」を入れたことで役目を果たす兵士になりました。便利な機械兵士だとでも思ってくれれば」
「……そうか、なら安心だぜ」
社長は満足そうな表情を浮かべた。椅子に腰掛けながら煙草を一本取りだし、ライターで火をつける。病室でタバコを吸う無神経さも甚だしいが、恐らくはそここそが〈名誉としての〉社長の在り方だったのだろう。スゥ、と薄灰色に濁った立ち煙が上へ舞い上がる。天井の空気清浄機に呆気なく吸い込まれ、それらは無惨な最期を遂げた。…すると体を横になっていた神子が口を開いた。
「私がいなくて申し訳ないのですが…社長。首相と会談して、PDMの生産費を補う補助金を貰って欲しいのです。今の経営状態と基底資金とでは、とても…」
「任せるんだぜ。首相は董子だ、互いに握手をするのは目に見えている」
「…お願いします」
神子はそう別れを告げると、3人もそのまま別れを告げて病室を出て行った。外からの薄日が木目地のブラインドの隙間から漏れ、光が差し込んで来ている。若干落ち着きを取り戻した神子は、担当の医師に許可を貰っていないのにも関わらず、見舞い品の和菓子を一齧りし、その愁眉を開くことなく窓辺を見つめていた。
◆◆◆
森の中を?い潜り、バイクで疾走する霊夢たちは田舎の田園風景の中を通ってはデモで有名な農村に到着する。仲間が彼女に止めるよう告げると、霊夢はブレーキをかけて停車した。音立てて止まるバイクは砂利道にて停車し、二人は降り立つと農村特有の新鮮な空気が鼻から伝わってきた。綺麗に澄んだ、何にも妨げられることのない純白な臭いである。霊夢はそれを幻想郷の空気に見立て
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