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TOHO FANTASY T
少女
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、下にいたパトカーと衝突、炎が舞い上がった。その様相は音から分かるものだ。後ろに座る仲間は悲惨な光景に諸手で顔を隠した。二人の乗る騎は何事も知らぬ無機質さ加減を伴わせ、??の如し過呼吸は緊張の沙汰を思い知らせるものだ。

「…パタゴニア機は不滅よ」

霊夢はそう仲間に言うと、落ちたスピードを上げるためにスロットルを握る。この先です、と言う仲間の指示通りに彼女たちは警察を潜り抜けた。

◆◆◆

「只今、郊外の農村地帯へ突入しました!」

病院内のテレビは農村部へと逃走する霊夢たちをしっかりと映していた。パチュリーとにとり、そして社長は霊夢との戦いで怪我をし、入院した神子のお見舞いに来ていた。見舞い客の三人は、神子の気分転換にと高級品の和菓子を差し入れた。名も著名で、かの神子とて何時かは頬張りたいと思ったものである。戦闘で胸や腕辺りを強打、骨折した彼女の様子は今に処刑された聖デュオニュシウスの模倣となった。しかし聖デュオニュシウスは甦る。その死体を拾い上げ、大地を踏みしめて歩くのだ。…神子とて同じであった。何かしらの幻想が、大きな靄となって暗雲と化し、立ち篭める世界で歩む巨人である。渡された和菓子は巨人の踏み絵に他ならず、動かす手は眩暈の中に生まれる漠然とした災難に差し伸べる『神の見えざる手』だ。

「──み、皆さん…来て下さったんですね……」

「…あなたが手古摺るのは仕方ないわ、相手は博麗の巫女よ。幻想郷でトップの力を誇っていると言われるぐらいだもの、伊達じゃないわ。しかし、バイクの運転に手慣れていたのは肩透かしを食らわされたわ」

「…まあ安心しなよ、直に治るだろうさ。ここの技術も大幅に進化したものでな。だからそれまでは安心してゆっくりしていきな。…後は私たちがアイツを何とかする」

にとりは神子に頼りがいのある言葉を投げると、神子はその言葉に甘える。今に死にそうな彼女は、その闇をうっすらと月光のように照らした。頭部に巻かれた幾重の包帯から染み出る鮮烈な赤褐色が生々しい。

「あ、ありがとうございます…」

「…それにしても―――神子、お前も哀れなものだぜ」

社長は神子の傷ついた体を見ながら、残念そうに呟いた。置かれていた椅子に腰掛け、顔を前に出す形で話しかける。憐れみの情が満遍なく放出されており、暗鬱へ差し込む恩寵の光耀であった──。

「…これでPDM担当課は暫く1人減ってしまったようなものだぜ。だからパチュリー、1人で頼む」

「分かりました、社長」

パチュリーは社長に頭を下げた。その先には、困惑した表情を苛立ちに置換して貧乏揺すりをする姿が目立つ。表では平静を繕っていたつもりであろうが、無意識的に表へ出ているのだ。
恐らく社長の意味深長な思慮は深淵のように奥深く存在していたであろう
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