少女
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ま何人かの白バイが彼女を追いかける。徹底して抵抗する意志が、運転中の霊夢の引きつった頬や疲弊に果てた目が表していた。──うち震える内奥、ただ無惨な姿を呈す恐怖のスペクトル。闘争に於いてその名残を遺す壊血病気味の右腕。それでも彼女は抵抗したのだ。──彼女は〈革命〉の人である。
「い、今!商業施設の駐車場に入っていきました!」
入口付近に設置された、天井に張り付く形態の監視カメラは駐車場に入ったバイクの姿を、他の車による死角で捉えることが出来なかった。霊夢は料金所のバーをそのまま突っ込んで壊し、上へ、上へと上がっていく。滑らかな坂を幾度も駆け抜けて、徐々に登っていく様は外にいるマスコミにとって誂向きの的となった。縁どられる被写体は、ヨハネス・フェルメールのような輝かしさを併せていながらレナ・ハデスの如し力への意志を人格化している。大凡、その聖なる讒言はこう語るだろう──私は百の魂、百の揺籃と陣痛を経験した。私は既に幾度もの訣別をした。私は胸も裂けるような最後の別離の瞬間を知っている、と。
「ど、どうするつもりですか!?」
仲間は訳の分からない行動をとる霊夢に対して聞くが、彼女には作戦とは言い難い『作戦』が存在した。 霄壤がひっくり返っても有り得ないような、飽くまで解放への〈過程〉の一存として、それを避けられぬように見えた霊夢の決断である。其処に尋常を求めることは誤ちであった。臠せ、その反現実の神々よ……今に彼女は〈彼ら〉を知る。
「──しっかりと掴まっておきなさい!」
「…え!?」
「だから言ったじゃない!行くわよ!」
仲間にそう忠告した彼女は立体駐車場の屋上、五階に到着する。後ろから追いかけてくる警察をよそにバイクは…屋上から舞う。縁を飛び越え、大空へ飛び渡るメニッポスの伝説。鋼鉄の蝋を翼としたイカロスの神秘。…彼女は第二のメニッポスであり、イカロスの後継者であった。何をも恐れず、人類の空に対する渇望をたった今、握り締めたのだ。最早彼女は新世界に達しようとしている。タイヤの空回りの音が空中で響き渡り、強大な力が彼女達を睥睨した。
ふとした反物理学的な抗力が働いた。それは霊夢の持っていた本来の飛行能力の欠片とも言うべき奇跡である。何故、この時にこれが作用したのかは本人とて知り得ないだろう。制御という幻想である。ウスペンスキーの言葉は今、それが真となったのだ。解けた一瞬の全身全霊は、〈未来〉と称されたエーテルに吸収される。飛んだ影響でそのままパトカーの壁を乗り越え、振動が大きながらも着地した。バイクは何度かバウンドしたが、何も壊れることを知らない。そのまま道路を走って行くは、神話の真理であったのだ。
駐車場まで追いかけてきた警察たちは霊夢たちの咄嗟の行動に手も足も出なかった。そのまま屋上から飛ぶが不時着し
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