一話
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らだ‥‥‥ッ!」
{助けてくれ。さらわれた}
そんな文面が目に入った。
さらにご丁寧なことにGPS発信履歴が付与されていたのだ。
(あの茶店から北か‥…)
彼は風のように身支度を済ませると刀を腰にぶら下げる。
引き戸を開けるとばっと外に飛び出した。さながら蜂のような勢いである。
とある一室に八雲は捕らえられていた。
逃げ道はなく障子も閉じられ隣室に続く襖も固く閉じられていた。
目の前には二人の体格が良い男子生徒と悪徳商人というべき恰幅のいい男子生徒がいた。
そして後ろでふんぞり返る悪徳代官は八雲を睨みつけている。
「単刀直入にいいます。この紙にサインを」
八雲の前に突き出された紙には権利書とでかでかと書かれていた。
「こ、これは」
「あなたのお店‥‥‥譲ってはいただけませんかねぇ」
底冷えするような声に腹の奥から恐怖を感じる。
「さもなければ今日のようなことが毎日、いえ一日に何回も起こるかもしれませんよ?」
「お、お前ら!ッ!まさかあの女の子を襲わせたのも!」
「勘の良い方ですねぇ。さぁどうしますか?暴力に怯える日々を過ごすか、私たちに譲り平穏な日常を過ごすか‥‥‥私でしたら当然後者を取りますが‥…」
手をゴマすりするように見せるその姿はまさに悪徳商人だった。
そこに追い打ちとばかりに悪徳代官が口を開く
「おまえの用心棒にいるあの女に‥‥‥どうなるんだろうなぁ」
「‥‥‥わ、わかった」
「おお!。賢い選択でございますねぇ」
意地の悪い笑みを浮かべる。
「権利書には‥‥‥」
ぐふふと悪徳商人は代官と共に薄ら笑いをあげている。
八雲は脅しに屈したと思っているようだった。
「‥‥‥サインを‥‥‥しないっ!」
八雲は縛られた手をきつく握りしめる。
彼の言葉にたいして驚いたた様子はみせなかった。
「‥‥‥そうですか。残念です。私としてもこんな手は使いたくはなかったのですが。‥‥‥おい、やれ」
だが紡ぐ言葉は冷ややかであり抑揚の感じないものだった。
「へい」
体格の良い男が八雲を羽交い締めにしもう一人の男がこぶしを握り締めた。
これから何をされるのか悟った八雲は絶望感に苛まれた。
「悪く思うなよ」
ハアっとこぶしを温めると思い切りこぶしを振り上げて───
「待て」
どこからともなく部屋に声が響く。
「「「ッ!!」」」
「何やつ!?」
悪徳商人がバンと障子を開くがそこには誰もいない。ただ静寂が包んでいた。
しかしここから見える門の入り口から一人の男子生徒が入って来る。
精強な顔つきにそれに見合った雰囲気を醸し出している。
どこか怒りを孕んでいた様相に悪徳商人はたじろ
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