第四章
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「筋肉は重いんだ。運動したらつくものだからね」
「あっ、トラ最近運動ばかりしてたから」
「筋肉がついたんだ」
「それで重い筋肉ばかりになったからなんだ」
「体重は変わらないの」
「そうだよ。トラは確かに痩せたよ」
これは確かでした。もうトラはデブではありません。
それでも体重は変わらないのです。そして変わらない理由は。
「筋肉がついてね。言うならマッチョになったんだよ」
「トラ筋肉モリモリになったの」
「そうなったのね」
「そうだよ。だからいいんだよ」
「ああ、そうなのね」
お母さんもです。ここでわかりました。
「最初何でだろうって思ったけれど」
「いや、お母さんが知らないと駄目だろう」
「あまりスポーツとかしなかったから」
それでだとです。お母さんはお父さんに答えました。
「それで」
「全く。けれどこれでわかったよな」
「ええ、わかったわ」
子供達と同じくです。お母さんもわかりました。
それで、でした。お母さんは納得した顔で今は自分の足元で寝そべっているトラを見ました。
トラは確かに痩せました。もうあのお腹も顔もありません。しっかりとしたものになっています。
そのトラを見てです。お母さんは言うのでした。
「あんたもう太ってないわよ。確かにね」
「ニャアーーー」
応えたのか応えてないのかトラは。
こう鳴きました。そして。
ゆっくりと立ち上がってそれでなのです。テーブルの上にあがって。
寝そべりました。歩がそのトラのお腹を突くと。
トラはその左の前足で攻撃してきます。歩はその手を引っ込めます。
それでなのでした。歩はこう言いました。
「トラ悪いよね」
「そうよね。悪いよね」
友則も言いながらです。トラにちょっかいをかけます。
トラはすぐに友則にも反撃してくるのでした。それを見てお父さんとお母さんは言いました。
「全く。猫っていうのはな」
「そうね。手間がかかるわね」
笑顔での言葉でした。
「けれどそれでもな。いや、それだからこそな」
「可愛いのよね」
「そうだよね。悪さばかりしてすぐに太るけれど」
「そうじゃないと猫は猫じゃないみたいだよね」
「ニャンニャン」
トラは笑顔で自分を見る家族にこう応えました。それは家族にはその通りと言っている様に見えました。
そしてトラはそのままテーブルの上に偉そうに寝そべってしまいました。家族はそんなトラを温かい笑顔で見守るのでした。痩せても体重の変わらないトラを。
痩せさせよう 完
2012・6・22
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