暁 〜小説投稿サイト〜
TOHO FANTASY T
異変
[7/7]

[9] 最初 [2]次話
彼女が持つ、精一杯の軽侮である。

「あんた、最低ね…」

「仕方ないじゃない、ビジネスだもの。──あなたは他人の仕事に口出し出来る偉い立場なのかしら?」

「普通はしないわ。…でもあんたがやってることはビジネスじゃない、誘拐よ!そんなの…許せる訳ないわ!」

「そうね。その通りだわ。だけどこれが私たちのビジネスなの。貴方の思想は、私の思想とは異なるのよ…邪魔しないでくれる?」

パチュリーは再び魔法の剣を構え、霊夢に高速で斬りかかった。咄嗟に霊夢は持っていたお祓い棒で攻撃を受け止める。

「あんたの邪魔をしないと…この異変を止められないじゃない…!」

「異変は既に終盤に向かってるのをご存知で?」

霊夢は何とかパチュリーを薙ぎ払うと、再び彼女はお祓い棒を構える。
するとパチュリーがつけていたイヤホンから何かの指令が彼女に言い渡されると、魔法の剣をかき消した。パチュリーは残念そうな顔立ちを浮かべ、霊夢を睨めた。そこには一つの暫定的表象、本来の真たる事物への相関的な内属のカテゴリーによる投影域の外化が浮かばれていた。

「…今、指令が入ったわ。霊夢、あんたは別に奴隷にならなくてもいいわ。…その代わり、私たちと同じ会社に採用したいのよ。別に変な提案じゃないわ。しかもこれは社長からの命令。…社長があなたに慈悲を払ってくれるらしいのよ。…霊夢、あなたはどうしたい?」

霊夢の気持ちは1つであった。それは既に決まっていたものである。己の正義感が果たしてそれを許すだろうか?誤謬的な真理論を追いやる超越的な伽藍が指し示すレトリックを、彼女が許容するだろうか?

「入る訳ないじゃない!奴隷ビジネス!?私はそんなあんたたちから奴隷を解放してみせるわ!」

「…最初はそう言うかもしれないわね。でもこっちへ来たら心情が変わるかもしれないわ。来る決心をしたら、ここから私たちの世界に来なさい。私たちはいつでも待ってるわ」

そう言い残すと、彼女は歪みの中に入っては姿を消した。

「会社には入らないわ。…でも行くに決まってるじゃない!…全員を助けてやるわ!……待ってなさい!チルノ!レミリア!」

もはや彼女に賽銭などを求める貪欲な気持ちは全く無かった。自らの身を歪みの中に入れると、彼女は吸い込まれるように幻想郷から姿を消した。
──幻想郷には、再び沈黙が訪れたのである。
[9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ