異変
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もみんなもいなかった…。…何か怖いよ。…でも霊夢に会えてホッとした」
服についた雪を手で払い、青いリボンをつけた彼女は頬を赤くする。反動的な恒温性による外観の変遷である事は言うまでもない。
彼女が呟く一瞬一瞬に、白い息が凍える大地に顕現する。
「…で、霊夢は何しにここに来たの?」
「人間の里のいつもの賑わいが消えて、人の気配すらしないのよ。ここ最近、魔理沙たちやレミリアたちとも会ってないし…おかしいと思ったわけ。…で、誰かを探したら、あんたがここにいたから来てみた訳」
霊夢はこの異変を重大そうに扱うが、チルノにとってはどうでもよさそうであった。それは彼女なりの、純粋で──そして残酷な──感情であった。
…いつかみんなが姿を現すに決まっている。そうだ、いつか来るよ。
そう信じていた彼女は再び雪だるま作成に取り掛かる。木の枝を2本拾い、土台となっている大きな雪玉の両脇に木の枝をそれぞれ刺す。そして近くに落ちていた石を幾つか拾い、上に乗っかっている小さ目の雪玉に差し込む。
そこに出来上がっていたのは、一人の人格。顔を持ち、他者として自覚させる因果律を掲げる異端者の末裔だ。
「見てみて霊夢〜!凄いでしょ〜!」
チルノは一生懸命作った雪だるまを霊夢に見せる。だが、巫女はチルノが想像した態度を取らなかった。彼女にとって、それはどうでもよい具象の一つとしか捉えていなかった。
それは自己の欲動が左右し、『このような下らない』結果に拐かされる存在である事を拒絶した帰結なのである。この反応の真相を、チルノが理解する接線もある事は無い。つまり、頽落した世人なのだ。
「ふ〜ん、それはよかったわね。それで、あんたは何か知ってる?」
この異変に夢中であった霊夢はそんなチルノに問うた。愚かしくも、彼女は既存の価値の代弁者である。龍を倒して獅子から歩む子供の意思を、その残虐性を放つ足で踏み潰し、蹴飛ばす人間なのである。自己倒錯を解釈し、その道を自己意思の体現と称するのだ。
それがチルノの意志に適うものではない。雪だるまを作った彼女は、その原理さえ分からぬ中で不意に霊夢への『嫉妬』を理解した。チルノのその嫉妬が、彼女自身の異端性を悪とする余裕を、その善悪の審判を彼方に追いやる超人の類似として、その眼差しを純粋で且つ狂気的なものとする。
「え…?あ、あたいは何も知らないよ…」
チルノは霊夢が一生懸命作った雪だるまの感想を一蹴し、異変に夢中であったことに寂しさを覚えた。泣きたくなる中で、それを留める真理への意思。闇を敷衍させ、そのロジックを淡々と現す具現者の体質は、今に崩壊しそうになっている。最大者、最現実者、最善者、最完全者の汎神論的特徴と合致する『最上級の賓辭』とは、よく言ったものではないのか──。
最も、それ
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