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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
エピローグ1 高町 なのは
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嫌なことがあった時。
もどかしさがあった時。
どうしようもないくらいに悩んでいた時。
私は決まって、この場所で叫んでいた。
波が防波堤を叩いて、その音が、私の声をかき消してくれた。
いっそのこと、私の心のモヤも消えてしまえばいいのにって、そう思ってた。
だけど消えないものばかりが増えていって、どうしようもない時間だけが流れていて――――
『――――っと、大丈夫か?』
私は、小伊坂 黒鐘君に出会った。
それが私に魔法と、小さな夢を出会わせてくれた。
何もない私が見つけた才能。
できることがあって、やりたいと思ったこと。
それをくれたのは、黒鐘君だった。
あの日、この場所で、私の流れていた時間は本当の意味で進みだした。
それは全部が全部、良いことばかりじゃなかった。
魔法は決して、楽しいことじゃなかった。
辛いことの方が多かったかもしれない。
だけど、あの子に……フェイトちゃんに出会ったことで、私は気づいた。
辛いことも、悲しいことも、きっと撃ち破れる。
この手の魔法は、そのためにあるんだって。
だから私は、フェイトちゃんと友達になりたいと思った。
事件が終わって、黒鐘君とのデートを終えたフェイトちゃんにそう伝えると、嬉しそうに頷いてくれた。
あの時は心の底から嬉しいと思った。
友達になれた。
名前で呼び合える関係になれた。
また一歩、自分の好きな自分に近づけた。
フェイトちゃんと別れる前、私たちはお互いの髪を結んでいた紐を交換した。
私の白と、フェイトちゃんの黒。
またいつか会う約束と一緒に交換したものは、私の宝物で、いつも髪を結ぶときに使っている。
早く、また会いたいな。
今度は魔導師としてじゃなくて、友達として、色んなところへ遊びに行きたい。
アリサちゃんとすずかちゃんにも紹介しなくちゃ。
そうしてみんなでどこかに行こう。
そう、彼も一緒に。
「よっ、なのは!」
「あ、黒鐘君!」
私は彼と一緒に歩き出す。
この場所は、嫌なことがあった時。
もどかしさがあった時。
どうしようもないくらいに悩んでいた時。
私は決まって叫ぶ場所だった。
だけど今は黒鐘君を、そしてフェイトちゃんを待つ場所になっていた――――。
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