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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第四十三話 また会うために
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腕に抱きついてるのがフェイトなんだからそりゃそうなんだが、なぜか怒ってる雰囲気なので驚いてしまった。
「あの子の事、詳しいんだね」
「え? ……まぁ、ジュエルシードの件では、一番長く一緒に関わってきた相手だしな。 俺が魔法を教えたのもあるし、ある意味一番弟子というか」
「弟子?」
「ああ。 ……なんか変か?」
「……あ、あはは」
「え?」
突如、何かを悟ったように乾いた笑みをこぼすフェイトに、俺は頭に疑問符を浮かべる。
「お兄ちゃんのそういう所、嫌いじゃないけど……」
「どういうことだよ、嬉しくないぞ」
「う〜ん……私が言うのは、ちょっと違う気がするし」
と、フェイトは俺のわからない何かを理解した上で、しかし言葉にしていいのか悩んでいるようで、額にしわを寄せて唸っていた。
そんな仕草すら可愛らしく見えるのだから、今日の俺はデートに浮かれているのだろう。
「てい」
「あうっ!?」
左手人差し指でフェイトの額を小突くと、可愛らしい悲鳴を上げて右手で突かれた部分を撫でた。
それでも左腕だけは俺の右腕を離さず抱きしめているのだから、この状態を気に入っているのだろう。
「今日はデートなんだろ? そんなに考え込んじゃもったいないぞ?」
今日は悩むのは少なめにして、目の前の時間を楽しみたい。
それを望んだのはフェイトで、そして俺もそれを望んだ。
ならば考えるのは懐かしい思い出だけでいいはずだ。
小難しいことは、デートが終わってからでも遅くはないだろう。
「うん!」
フェイトは再び笑顔で両手で俺の右腕を抱きしめ、引っ張るように小走りを始めた。
「おお、ちょっ!?」
「えへへ。 次はどこに行くの?」
無邪気な笑顔が、打ち上がった水飛沫と太陽の光に反射して、宝石のようにキラキラと輝く。
そのあまりの美しさは、写真に収めたいと思ってしまうほどで、見惚れて、そして思った。
ようやくここで、俺の中でジュエルシード事件が終わったのだと。
フェイトが笑って過ごせる日が来た。
そのために、必死になった。
時には本当に死にかけた戦いもある。
フェイトと戦ったこともある。
救えなかった人もいる。
俺は、自分のしたことが正しかったのか、正直よくわからなかった。
そういう意味では、俺の中ではまだジュエルシード事件が終わってなかったんだ。
だけど、フェイトのこの笑顔が見れたら、納得した。
終わったんだ。
全部、終わったんだ。
正しいとか、間違ってるとか、そんなものは全て後付けで、今はわからなくても、いつかわかる時が来るのだ
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