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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
空の最も暗い時
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に立ち昇る。

「よ。災難だったな」

 その中の一つが、黒の指なし手袋を装備した手を軽く挙げて話しかけてきた。夜の暗闇に同化するほど真っ黒の装備を全身につけたカラスの如き人物と言えば、マサキの知り合いには一人しかいない。

「……キリト」
「何だよそんな辛気臭ぇ顔して。疑いは晴れたんだろ?」
「ちょっと、何でキリトばっかり。あたしたちもいるんだからね!」
「そうですよ! いないもの扱いは怒りますよ!」

 マサキの肩を軽くはたいたエギルと、その後ろで不満の声を上げる、リズベット、シリカの二人。その雰囲気を嗅ぎ付けたのかいつの間にかクラインまでもがその輪に加わり、真夜中だというのにその場の人口密度は急激に増加した。

「つーことは、今回はマサキを助けるために、アスナ……さんたちが一枚噛んだってことか」
「アスナでいいですよ。エギルさんたちには、必要分の記録結晶の調達をお願いしたんです。緊急、かつ大量の調達だったので、とてもご迷惑をお掛けしてしまいましたけど……」
「何だよ、そういうことなら俺に相談してくれりゃあ、知り合い駆けずり回って分捕ってきたのに」
「お前は嘘がヘタクソだからな。ことを知らせて露見するより、黙ってた方がやりやすかったんだよ」
「んなにおう!? ……と言いたいとこだが、まあ間違っちゃねえから何にも言えねぇなぁ」

 クラインがこめかみをぽりぽりと掻くと、マサキの周囲を色とりどりの笑い声が駆け巡る。
 ――何なんだ、これは。
 地に足がつかない浮遊感と、景色がぐるぐると固定できない酩酊感。そして、自分一人だけが間違った世界に存在していると錯覚してしまうような、言いようのない気持ち悪さ。

「マサキ君、大丈夫?」

 突発的な頭痛と吐き気に襲われて小さくえずきながら手で額を押さえると、その手の向こうから心配そうなエミの声が掛けられた。それから耳を背けるように首を回そうとしたら、額を押さえる右手をそのエミに奪われてしまう。意識の中に入り込んでくる彼女の表情がみるみるうちに青ざめていくのがスローモーションのように見えた。

「どうしたの!? すっごい顔色悪いよ!?」
「触るな!」

 顔を近づけようとするエミの手を振り払い、体ごと反転。目を瞑り、音を遮断し、もてる意識の全てを使ってエミの情報を風化させることに努める。駄目だ。まずは落ち着かなくては……。自分のコントロールを外れて暴走する荒い呼吸と心拍だけに集中し、ぐっと目元に力をこめる。

「何故だ……何故、こんなことを……」
「何故って……そりゃ、皆お前のためを思って……」
「俺はそんなこと頼んでない!」

 困惑するクラインに向かって叫ぶ。必死に握り締めていた自分自身が、するりとほどけて指の間から落ちていく。

「……本
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