アインクラッド 後編
空の最も暗い時
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んと話にならん。そこは認めましょ」
「裁判に取調べと来たか……いい加減にしてもらいたい。人を犯罪者呼ばわりするために俺を呼んだのか?」
痺れを切らしたマサキが口を挟むと、キバオウは口をへの字に曲げ、フンッ、と鼻から荒い息を吐き出した。
「しらばっくれとんのも今のうちや。ええか《穹色》。今お前には、七人の一般プレイヤーを殺害したっちゅう容疑が掛かっとるんや!」
「……は?」
寝耳に水。さしものマサキもまさか殺人犯扱いを受けるとは思っていなかった。
「とぼけんなや!」
呆けた態度が気に食わなかったのか、キバオウの更なる怒号が飛ぶ。
「ここ一ヶ月の間で、中層のプレイヤーがソロとパーティー合わせて七人殺されとる。目撃者の話によると、その犯人は男の刀使いで服装はワイシャツにスラックス。被害者はほぼ一瞬でやられたそうや。ということは自動的にボリュームゾーンのプレイヤー複数を相手に回して圧倒できるレベルと装備が必要やけど、そんなのは攻略組以外におらん。その上この人相。どうや! 言い逃れられるなら言い逃れてみぃ!」
「少なくとも――」
マサキは被せ気味に言った。こういう時は、後が多少遅れたとしても弁論の始点を早めた方がいいからだ。一瞬間を取ったうちに頭の中で考えをまとめ、口から出力する。
「俺が犯行に及ぶなら、むざむざ目撃者を逃がすことはしないだろうな。これでも《索敵》スキルは完全習得してる。たかだか中層のプレイヤーを見逃すはずはない」
「それにや。こっちだって何の事前調査もなしに言ってるわけやない。お前さん、ここ一ヶ月フィールドに潜りっぱなしでろくに街も歩いてないんやろ? その期間も、この事件の発生とピッタリ一致しとる」
「迷惑な偶然もあったものだ。それとも、他に何か物証が?」
「ない。が、お前が怪しいのは確かや。そんでこっちとしても、そんな奴には命を預けられん」
腕を組み、神妙な面持ちで唸るキバオウ。二十五層以来ろくに前線まで上がってきたこともない連中が何を、と憎まれ口が頭に浮かぶが、多めに吸い込んだ息で包み、粉薬をゼリーと一緒に飲み込む要領で鼻から排出する。
「犯人やない言うんなら、事件が起きた三週間前、十二日前、三日前のそれぞれ夜中のアリバイくらい証明することやな。そうでもなけりゃ、お咎めなしとはできん。当分の間監視付きの謹慎と……犯人がお前でないことを証明するために検証が必要や。《風刀》スキルの情報、全部開示せぇ」
なるほど、それが目的か。マサキはキバオウの釣りあがった目尻をじっと見据えた。
「先二つは証明できるものがないな。だが、三日前は彼女と一緒にいた」
静止しているアスナの後姿に視線を移し、やや間を開けてイガグリ頭に戻す。
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