アインクラッド 後編
空の最も暗い時
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じりに言った。
「ずっと仏頂面を続けているのって、結構大変なのよ」
そんな奇妙な二人旅は、五日目の夜、三体目の精霊を倒して得たドロップアイテムを街まで持ち帰ったところで終わりを告げた。目当てのアイテムが見つかったわけでも、見つからないと分かったわけでもない。
攻略組で、緊急の会合が行われるとのメッセージがアスナに入ったためであった。
アスナに続いて頑丈な金属製の扉をくぐった途端、場に流れていた空気が一変した。入り口側へ向かって口を開けた半円状のテーブルに向かって歩くアスナとマサキを中心に、波紋が広がるようにざわめきが伝播していく。水面に投げ込まれた小石の気分だとマサキは思った。
「『血盟騎士団』副団長、アスナ。緊急会議の報を聞き参上しました」
タン、とタップダンスのような高い音を鳴らし敬礼したアスナを横目にマサキは部屋の中を一瞥した。攻略組の会議、とだけは聞いていたが、夜も遅い時間帯ながらこの場にいるのはいずれも攻略組に所属するギルドのトップ、あるいはそれに近い幹部たちが合わせて十数人。ただ一人、悪趣味な全身真っ赤の落ち武者が口をあんぐりと開けて硬直しているのがどうにもシュールな光景であるが、彼の他にも中小の攻略ギルドからメンバーが召集されているところを見ると、それだけ大きな話題なのだろう。ソロの面々が呼ばれていないが、彼らは元々ギルド間の話し合いには呼ばれず、攻略会議にのみ出席するのが通例だ。ということは、純粋な攻略以外の議題ということになる。ちなみに、当然の如くヒースクリフは列席していない。
「ご苦労さん。急にお呼び立てしてしもてすいまへんなぁ……と言いたいとこやけど。後ろの男、それどーいう意味ですかいな? まさか今日の議題が分かってないいうことはないでっしゃろ?」
などと呑気に構えていたら、何故か自分が話題になっているらしい。その声にも聞き覚えがあったのでアスナの影になっている人物を覗き込むと、これまた覚えのあるイガグリ頭がマサキを睨みつけていた。キバオウ――今は《軍》で幹部をしているという話は聞いたが、直接会うのは久々だ。そもそも二十五層で大損害を受けフロア攻略からは撤退した《軍》が攻略会議に人を出すことはなく、アインクラッド内の治安維持やら、経済格差やら、もっぱら行政方面の会議に参加しているという。となれば今回もそのような話であることが予想されるが、だとしたら何故一匹狼のマサキが連れ出されたのかという疑問は消えない。
そんなマサキの思考を汲み取ったかのようにアスナが口を開いた。
「勿論、今回の議題は承知しています。その上で彼を同行させたのは、その方が真相究明に都合が良いと、私が判断したからです」
「ほほお? ……まあ、裁判するにも取調べするにも、まず容疑者がおら
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