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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
空の最も暗い時
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月はホームにも帰らず前線の街に滞在してるって聞いたけれど」
「誰から聞いたのかは大体想像付くが、単純に攻略に勤しんでいただけだ。サボっていると、何処ぞの副団長様に叱られるからな」
「その想像、多分間違ってるわ。アルゴさんから情報を買ったの。まあ、エミも相当心配しているでしょうけどね」
「……心配するのは、あいつの勝手だ」
「以前のわたしも、全く同じ返答をしていたと思うわ」

 口元に手を当て、面白そうにくすくすと笑うアスナ。マサキは小さく舌を打つと、苛立ちを隠さない荒々しい動作で顔を背ける。

「そろそろお腹も減ったわ。ご飯にしましょう」
「ああ。勝手にしてくれ」
「そう拗ねないの。キミの分も用意するから、ちょっと待ってて頂戴」

 その言葉から少し遅れて、アスナが火を焚いたのだろう、地面がほんのりとオレンジに色づき、自分の折り曲げた膝を頂点にした三角形の影が身長よりもずっと遠くまで伸びていた。マサキは一瞬、要らない、と噛んで吐き出すような口調で断ろうと思ったのだが、そこまで意固地になるのも馬鹿馬鹿しくなって喉元で言葉を引っ込めた。時々、こんな風に自分でも何をしたいのか分からなくなることがある。

「これはわたしの想像だけれど……エミは下手に騒いでキミに嫌な思いをさせるより、一人でキミと会って真意を聞きたかったんだと思うの。だから、わたしにもアルゴさんにもそのことを話さなかった。そういう気遣いも、キミにとっては必要のないものなの?」

 背後からの声を聞いた瞬間、頭にエミが浮かんだ。彼女を意図して避けていた自分と会った時、彼女はどんな顔で、どんな言葉を紡ぐのだろう。「良かった、会いたかった!」とでも言って、安心したような笑顔を見せるのか、それとも、「心配したんだから!」とでも言ってむくれるか。どちらだったとしても同じように言えるのは、マサキにとって、それこそが彼女を避ける一番の原因だということだった。

「違うな。ああ、訂正しよう。必要ないんじゃない、邪魔なんだよ、全て。目に入れたくないものを遠ざけるのは当然だ」
「そう。……でも、きっとそのうち気が付くと思うわ。わたしも、つい最近気付いたばかりなんだけどね」

 心なしか弾むような声と一緒に、コンソメのような香りが漂ってきた。夕食が完成したようだ。

「あいつが邪魔な存在ではないと?」
「いいえ、もっと簡単なこと。……はい、できたわ」

 左耳の横に熱を感じて眼球をそちらへ動かすと、野菜やつみれが入った琥珀色のスープが湯気を立てていた。受け取るために腰を回転させて振り返ると、思ったよりも近くにアスナの顔があった。そう思わせるほどに、夜風に揺らめく火のオレンジを顔の半分に浴びた彼女の笑顔は優しかった。
 アスナはスープの入った器を寄越すと、今度は少し苦笑交
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