アインクラッド 後編
空の最も暗い時
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つでもぶつけてやる――。イメージしたヒースクリフの金属めいた冷たい容貌に投げつける罵倒の言葉を練っていると、アスナの少々戸惑ったような声が耳を打った。
「……わたしからも聞かせて。その、どうして今朝、キリト君の名前を……?」
「キリト? ……ああ、あの喫茶店での話か」
てっきりクエストや報酬かもしれないアイテムについて話を振られると予想していたマサキは意外な話題に返答まで少々のタイムラグを要してしまった。が、アスナは全く気にした素振りを見せず頬を赤らめている。その態度が最早答えだろうと内心で思いながらマサキは答えた。
「単純に、お前が誰かをパーティーに誘うならあいつだと考えた。だが俺に話が回ってきたということは、キリトには請け負わせたくないということだろう。であれば、そこに個人的感情が働いているのではと邪推しただけだ」
「そ、そう……」
皿のように丸めた目をぱちぱちと何度か瞬きながら、神妙な面持ちでコクコクと頷くアスナ。どうにも不思議な反応だと思ったが、気にすることでもないと意図的に流す。
「話は終わりか?」
「……いいえ。これからが本題です」
純粋な疑問ではなく確認の意味で飛ばした質問に対する返答は、マサキの予想とは違ったものだった。アイテムストレージから保存食を取り出そうと動いていた右手が静止する。アスナはまつ毛が綺麗に上を向いているまぶたを一度閉じ、自らを落ち着けるようにふうと小さく息を吐いてから、彼女が放つ刺突にも似た美しくも鋭い視線をマサキに向ける。
「先ほどの戦闘で、何故強引に割り込んでまでスイッチさせなかったの?」
「必要がなかった」
「それは、わたしが実力不足だと言うこと?」
「いや? 仮に同行していたのがヒースクリフだったとしても、あの場面なら俺は一人で片付けた。その方が速かった」
ぎろり、という擬音が相応しい威圧感を眉一つ動かさずに受け流し、「そうだろ?」と目線でうそぶく。
「一緒にいたのがエミだったとしても?」
「ああ、勿論」
マサキにとって今のアスナの質問は予想した通りのものだった。どんなに鋭い攻撃でも、来ることが分かっていれば対処など容易い。
話は終わったとアピールするように空を見る。既に日は沈み、星のない夜空が広がっていた。
「そう。……やっぱり」
アスナの言葉から怒気がすっと消えたのを感じたマサキが怪訝に思い振り返ると、彼女は暗がりの口元を微笑で彩っていた。訊き返すべきか、受け流すべきか、逡巡した隙を逃さずアスナは続ける。
「あなた、やっぱり似てるわ。以前の死にたがっていたわたしと瓜二つ」
「俺は安全マージンも休息も取ってる。マージンも武器の耐久値も無視して倒れるまでフィールドに居続けたりはしない」
「そう? ここ一ヶ
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