アインクラッド 後編
空の最も暗い時
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気で言ってンのかよ、お前ェ……!」
驚きで凝固していた表情が沸騰し、今にも殴りかからんばかりの勢いで詰め寄ってくるクラインを睨み返す。ああ、そうだ。こいつらだ。せっかく静かだったのに。せっかく穏やかだったのに。誰も来てくれなんて言っていないのに、こいつらが事あるごとに土足で踏み荒らし、引っ掻き回すから。畜生。畜生、畜生……!
「二人ともやめて!!」
そんなマサキに冷や水を浴びせたのがエミだった。体と脳から熱が急速に奪われていき、入れ替わりに強い嫌悪が湧き上がる。数回の深呼吸で息を整え、意を決して振り返ると、彼女は両目に涙を溜め、胸の前で両手を握り締めていた。そしてマサキと目が合った瞬間、バネみたいに深々と頭を下げる。
「ごめんなさい! ……アスナから、マサキ君がPKを疑われてるって聞いて、それで、いてもたってもいられなくなって……!」
「……二度と、俺に近寄るな」
涙に震える声。その必死さを跳ね除けて、マサキは冷たい声色で絶縁を突きつける。先ほどの巻き戻しのようにエミが顔を跳ね上げるのを視界にいれないように振り返りつつ、
「マサキ君、待っ――」
静止の声を意図的に無視して《瞬風》で自宅に逃げ帰る。
誰もいない真っ暗な自室。先ほどまでとは打って変わった静寂と孤独がマサキにとっては心地良かった。ベッドに寝転びながら時間を確認しようとしてチェストの上にある置時計に目をやるが、暗くて針の位置が読めない。仕方なくウィンドウからデジタル時計を呼び出すと、午前三時を過ぎた頃合だった。
夜明け前、空が白み始める直前。夜が最も深くなる時間帯だ。
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