第二十三話 堺の街その六
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「マヨネーズとな」
「鰹節、海苔、紅生姜だよな」
「欠かせない、しかし」
ここで英雄は言った。
「マヨネーズはお好み焼きよりも少なくだ」
「多いと味のバランスが悪いからな」
「焼きそばはソースが強い方がいい、しかもだ」
「胡椒の味もあるしな」
「マヨネーズはお好み焼きより少しだ」
「その少しの量もだよな」
「あまりにも少ないと駄目だ」
かえってそれもというのだ。
「あくまで適量だ」
「そしてその適量はな」
「自分の経験からわかるしかない」
「そしてその適量がわかるのがな」
マヨネーズの味も強いお好み焼きを食べつつだ、客は英雄に対して笑って言ったのだった。
「粋、そしてな」
「通だな」
「結局経験なんだよ」
「何かをわかるのもな」
「そうだよ、兄さんわかってるな」
「経験は大事だ」
まだ若いが英雄はわかっていた、このことも。
そうしてだ、客に応えて話した。
「焼きそばの味もだ」
「楽しむか」
「そうする」
こう言って実際にだ、英雄は焼きそばも注文して食べた。そのうえで焼酎も大きな瓢箪にして四本全て空けてだ。
粋な客と別れ彼が紹介してくれた道場に入った、するとだ。
道場は結構な数の門弟がした、しかし感覚的に侍の者はいなくてだ。英雄は道場の稽古を観つつ傍にいた若い門弟に尋ねた。
「侍は少ないか」
「はい、堺ですから」
その若い門弟は英雄にすぐに答えた、はきはきとした調子で喋る整った爽やかな顔立ちの若者だ。
「お侍さんはいても」
「少ないか」
「そうなんです、私にしましても」
「商人か」
「はい、習いごとの一つとして」
そのことからというのだ。
「この道場に通っています」
「そうなのか」
「あといざという時にも備えて」
「賊や魔物に備えてか」
「街の外に出たら危ないですからね」
堺の外はというのだ。
「用心に備えて」
「それでか」
「剣術を学んでいます」
「護身か。わかった」
「はい、ただお侍もいますよ」
門弟は意識せずに英雄が望んでいる話をしてきた。
「それも凄い人がいまして」
「聞いている、他の世界から来た人間だな」
「あっ、聞いてましたか」
「凄腕らしいな」
「はい、ふらりと堺に来られて」
そしてというのだ。
「この道場の門を叩かれて」
「入門してからか」
「その腕を見せられて今ではです」
「師範代か」
「そこまでなられています」
「見たところこの道場はいい道場だ」
門弟たちの稽古を観ての言葉だ、その目で。
「皆いい剣の使い方をしています」
「うちの先生はいい先生ですからね」
「ただ腕が立つだけではないな」
「もうかなりのご高齢ですが」
それでもというのだ。
「お若い時はこの島一の剣豪と言わ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ