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レーヴァティン
第二十三話 堺の街その三

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「一体」
「どっちといいますと」
「混ぜるか挟むか」
 どちらかというのだ。
「それで」
「ああ、そういうことですか」 
 親父は英雄のその言葉に頷いてから彼に言った。
「わかりました」
「そうか」
「両方あります」
 どちらのお好み焼きもというのだ。
「堺、和泉のも厳島の方のも」
「それでは和泉の方を貰おうか」
「混ざる、ですね」
「勿論だ」
 木造の店の中で親父に微かに笑って答えた。
「それを貰う」
「では何玉にしますか」
「豚玉とだ」
 まずはこちらだった。
「海老玉、それに烏賊玉もな」
「その三つですね」
「それを貰いたい」
「随分と召し上がられますね」
「腹が減ってな」
 笑って親父に話した。
「それだけ貰いたい」
「はい、では」
「頼むな」
「わかりました」
 こうしてだ、英雄は親父に三枚のお好み焼きを頼んだ。無論それだけでなく酒も頼んだが。
「焼酎はあるな」
「はい、あります」
 今度はおかみが応えた、恰幅のいい中年女だ。
「お酒はそちらですか」
「それを貰いたい、その焼酎は」
 店の壁の品書きを観て言った。
「黒糖焼酎だ」
「そちらですか」
「そちらを貰う」
 こういうのだった。
「いいか」
「はい、すぐにお持ちします」
 こうして酒も頼んでだ、彼はお好み焼きと焼酎を楽しみだしたが鉄板の上に置かれたそれを食べる彼にだ。
 隣の席の客が笑ってだ、こう言ってきた。
「兄さん通だね」
「そう思うか」
「ああ、店のたれをかけてな」
 お好み焼きにというのだ。
「そこに鰹節に海苔、紅生姜まで乗せてな」
「そしてだな」
「西から伝わったマヨネーズまでかけるなんてな」
 それもというのだ。
「通だね」
「たれの正確な名前も知っている」
 英雄は箸とへらでお好み焼きを食べ酒を飲みつつ言った。
「ソースだな」
「おお、そこまで知っているか」
「もっと言えば今は飲んでいるが」
 お好み焼きで、というのだ。
「これでおかずに飯を食う時もある」
「さらにいいな」
「これ位は普通じゃないのか」
「それが違うんだよ」
 その客は言った、見れば整った顔立ちで歯は白い、眉毛も整えていて着流しの着こなしも粋な感じだ。
「最近な」
「そうした食い方をか」
「しない奴が多いんだよ」
「マヨネーズをかけないか」
「ましてや紅生姜までなんてな」
「もっと言うと中に天かすもだな」
「入れないのを美味いって奴がいるんだよ」
 こう英雄に話した。
「どうだよ、これは」
「よくないな」
 英雄は一言で返した。
「まず天かすはだ」
「忘れちゃいけないよな」
「入れると味がかなりよくなる」
 それだけでというのだ。
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