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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
第百二十五話 秋田の思い出その二

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「どんどんね」
「そうだね」
「こんなに秋田のこと言ったことなかったわね」
「はじめて聞いたよ」
 僕はとだ、微笑んで答えた。
「そういえばね」
「そうよね、けれどね」
「今はだね」
「どんどんね」
 これまでとは全く違ってというのだ。
「話せるわ」
「飲んでるせいかな」
「そうでしょうね」
 自分でもだ、詩織さんは認めた。とはいってもお酒を飲むのは止めてはいない。
「これは」
「そうだよね」
「ええ、けれどもうこの際だから」
「話すんだ」
「聞いてくれる?」
「うん」
 僕は詩織さんの言葉に微笑んで答えた。
「そうさせてもらうよ」
「それじゃあね」
「これまで聞いたことがなかったし」
「私の昔のことは」
「別に詩織さんがお話して詩織さんに悪いことじゃないならね」
 それならとだ、詩織さんに言った。
「お話して聞かせてくれるかな」
「それじゃあね」
「うん、そうしてね」
「実際話したくないことは話してないし」
「これからもだね」
「話さないから」
 秋田のそのこともというのだ。
「そうするから」
「じゃあ」
「聞いてね、いや秋田は」
「秋田は?」
「寒くて雪が多くて」
 長い冬のことをさらに話してくれた、秋田のそれの。
「それが辛いけれどそれだけにね」
「暖かいんだね」
「お母さんがそうでお家の中もそうで」
「他の場所もかな」
「そう、何かとね」
 寒いその中でというのだ。
「暖かいのよ、そして長い冬が終わったら」
「春だね」
「その春がまたいいのよ」
「桜が咲いて?」
「まずは梅が咲いてね」
 そしてというのだ。
「それから桜ね、それがいいのよ」
「桜はいいよね」
「冬が終わって春がはじまって」
「桜が咲いて」
「やっと春が来たって思えるから」
 いいというのだ。
「春が来るのも遅いけれど」
「東北から北海道はそうだね」
「だからテレビで桜前線のお話を聞きながらね」
「今か今かって感じで」
「待ってるのよ」
 桜が咲く、つまり春が来る時をというのだ。
「それで桜が咲く頃になると」
「春が来たって実感出来て」
「他のお花も咲いてそれまで雪や霜に覆われていて白かった草木が緑になって」
「生きものもだよね」
「出て来てね、凄くいいのよ」
「冬の後は」
「長い冬でも暖かい時も多くて」
 そしてその暖かさの中にいて、というのだ。
「息抜きも出来ていて」
「そうして春が来るのを待っていて」
「遂に来たって思えるのよ」
 桜を見たその時にというのだ。
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