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歌集「春雪花」
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 雲隠す

  いつぞ覚めたか

   十六夜を

 知らぬうちにそ

    朝の来たれる



 空を覆い隠す雲…十六夜の月を眺めようかと待っていても、昇ったのかすら分からない…。

 溜め息をつき…ふと思えば、彼のことを考えている自分に気づく…。

 もう…このまま永遠に会うことはないのかも知れない…。

 空は闇…儚い虫は歌う…。


 侘しさにまた彼を想い…気づけば暁になってしまっていた…。



 夕されば

  秋の時雨し

   空寒み

 想いし君の

    肌そ恋しき



 夕方…淀んだ空から冷たい雨が降りだした…。

 十月に入ったばかりだと言うのに、あまりにも肌寒い夕暮れ…。

 一人部屋で過ごせば、ただただ虚しく…寂しさに溺れてしまいそうになる…。

 あぁ…一度で良い…彼の温もりを感じられたら、一体どれだけ幸せだろうか…。


 叶わぬ願いに、溜め息しか出ない自分に…より虚しくなるばかりだ…。




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