第92話 懇願
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看護師はみるみる筋肉が小さくなり白井を起き上がらせると余計な怪我をしていないか見てからゆっくりと白井の病室へと移した。
初春も心配で付いていった中で白井が居た場所から蜘蛛のように這いずり回る木の面が逃げようとしているのが見えた。
「ん?......あー!トビじゃないの!?」
「んげ!?ヤバイ」
面の存在に気付いた畜生道が声を上げると地獄道が前に出て黒い棒を構えた。
「良く解りませんが良い機会ですね。さっさと殺してしまいますか」
その棒を見た瞬間にトビの面はフルフルと震え出してパニックになったように触手を出しながら扉へ一直線に逃げ出した。
「や、やだっす!死ぬのは嫌だ!」
「ま、待ちなさい!コイツ」
キンキンと頭の奥まで響きそうな不快な声で決死を叫び声を上げていてチョロチョロと空いている扉へと触手を伸ばす。
「閉めてください!」
「は、はい!」
佐天が反射的に扉を閉めるが既にトビは飛んでおり廊下の光がしぼんでいく。
「間に合えー!」
と必死の思いも虚しくトビが出る寸前で扉が閉まり、思い切り面が激突して乾いた木箱のような音がパコンと鳴った。
ズルズルと床にずり落ちるとトビはかけない冷や汗を掻きながら振り返ると輪廻眼を光らせる地獄道、人間道、畜生道が立ってギロリと睨みつけていた。
「久しぶりねぇ〜。姿が見えなくなったと思ったらこーんな惨めな姿で」
「これで少しは溜飲を下げられますね」
黒い棒をチラつかせながらゆっくりと伸 ばしている。
「ぐぬぬ。人間のクセに生意気な......」
「その人間に追い詰められているのは何処のお馬鹿さんかしらね〜。佐天さんだっけ?ありがとうね」
「い、いえ......あたしは」
「さてと面倒にならない内に始末しておきますよ」
ガタガタと震えているトビに佐天は少しだけ憐れみを生じさせてしまった。
「ゆ、許して欲しいっす!お、オイラ死にたくないっす!」
面を傾けて破片が飛び散るのも厭わずにトビは面を下げ続けた。
「はぁ?何命乞いしてんの?アンタねぇ!そう言ってきた奴を助けた事あるわけ!!?」
「ぜ、全部『ゼツ』がやれって言ったからっす!オイラは楽しい大会にする為に色々準備していたのに直前でぶち壊されて......み、見逃してくれるなら二度とこんな真似しないっすから」
多分泣いているのようで声が少しだけ滲んできた。
「な、なんか可哀想......」
「はぁ?人間道マジで言ってんの?トビだよ。こんな奴が根っこから反省していると思うわけ?」
ギラリと黒い棒を向けると扉に飛び掛かって必死に開けようと触手を伸ばそうとしているが地獄道の青い焔に取り囲まれて逃げ場がドンドン少なくなっていく。
「ひぃぃー!た、助けて。オイラが......オイラが悪かったっす....
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