第92話 懇願
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「良かったです!気が付いたんですね」
「!?」
不意に後ろから声が聴こえて慎重に顔の右側四分の一だけ露出した箇所だけで振り向いた。
そこには心配そうに今にも泣き出しそうな初春とホッと一息入れている佐天がニカッと笑っていた。
「あの時、私を逃す為にありがとうございます!」
「いやー、サソリを探しに行ったけどなんか病院内で反応があったから戻ってきたのよね。何か知りません」
「何処か体調が悪い所はありませんか?何でも言ってくださいね」
張り切って拳を固める初春にトビ白井はダラリと腕を伸ばして
「な、んでもあ、りませんわ.....てめーらが死ねば万々歳!」
振り返りながら鞭のように腕をしならせて注射針を振りかぶる。
「何をしているんですかね......」
「あ?」
すると、病室の扉が開いて鬼の権化とかした看護師がワゴンを勝手に明後日身勝手な患者を見下ろすように立っていてボキボキと指を鳴らしている。
一瞬だけシュワルツェネッガーが降臨している!
看護師は筋肉を隆起させると患者を掴まんとばかりに躙り寄りながらゆっくりと掌をトビに向けていく。
「?何かしら?それって」
看護師が一瞬だけ妙な筋の入った面を見て首を傾げる中でトビは動きが止まったと判断すると看護師の首目掛けて針を刺そうと殴り掛かる。
「!?」
「先生......大丈夫かな?」
病室の中では木山が包帯を肩から背中に掛けて巻いた状態でベッドに横になっていた。
人間道がフードを被りながら心配そうに覗き込んでいる。
爆発による火傷と肺まで達しそうな破片が刺さったが病院側の適切な処置のお陰で命に別状はなくゆっくり寝息を立てていた。
「出血がかなりあるから無理はさせない方が良いですね」
「アンタのエンマ様でも治せないの?」
「オレのエンマは無機質専門。人間の身体は治せませんよ」
「不便な能力ね。さてと天道達の助太刀に......!?」
畜生道の視界に白と黒の布のようなものが現れて諸共奥の壁に吹き飛ばされた。
「うにゃ!!?」
人間道が小さく身体をビクッとさせると扉の前で目を光らせて綺麗に一本背負いをした担当看護師の姿が映っていた。
吐く息が野獣のように白く棚引きたる。
廊下側から悲鳴や息を飲む音が漏れていて吹き飛ばされた病室の奥では縺れ合うように畜生道と赤い髪をした白井がひっくり返りながら悶絶していた。
「痛ったぁぁー!何なの一体?」
「意外に強い......っすね」
トビの面は力を使い果たしたかのように白井から剥がれ落ちた。
「白井さん!大丈夫ですかー!」
「何で軍曹に......軍曹さんに手を出したんですか!?サソリでさえ勝てない戦闘民族なのに」
初春はひっくり返って気絶したかのように見えた白井を心配そうに駆け寄る。
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