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とある科学の傀儡師(エクスマキナ)
第92話 懇願
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孤独
拒絶
悲しさ
憧れ

そしてあの忌まわしい記憶へとネットワークは繋がる。
『さあ、これより第九九八二次実験を始めよう』

捲き上る噴煙に飛び交う人形。
必死に自分の大切な人を守るため、暖かく迎えて尊敬している人にもう一度逢う為に指を動かして抵抗していく。

腕はもぎ取られて
脚は壊されて
まるで熱湯を被ったかのような激痛にのたうち回りながらも懸命に前だけを向いていた。
薄ぼやけた月の光でも希望の光に変え難い。
景色が真上からゆっくりとスローモーションのように無機質な物体が落下してくる圧迫感を感じながら安い命よりもずっと大切なカエルのバッジと破片となった人形の腕を抱き締め続ける。

お姉さま......サソリ様
だいすきです

時空が大きくブレていく。死とはこのように感じるものなのかと考えている時に黒い影が必死の形相で飛び込んできたのを見届ける。

景色は暗転して彼女の心や記憶が溢れ出してくる。
小さな人形の身体に入った彼女は実験の残酷さを跳ね除けてまぶしい世界を走り回っていた。
美味しいものを食べて
大切な人と一緒に暮らしながら日々を全力で生き抜いている姿が映る。

その溢れそうな笑顔で全て救われた気がした。
ずっと陰惨で残酷なだけだと思っていた彼女達の人生は決してそうではなく、命を懸けた人々の想いが彼女を解放していた事を知る。
実験を止めようと動いていた布束は間違っていなかったと安堵した。
彼女達の記憶ネットワークに流れた生き人形となった彼女が優しく語りかけているように思えた。


そこで布束に掛けられていたヘッドギアのスイッチが切られて、御坂とメイド服姿のミサカに扮する食蜂が様子見をするようにおっかなびっくりとしながら少々固まっている。
「い、生きてるわよね?」
「なんとか言ったらどうかしらぁ。一応助けたんだからぁ」
「あ、アンタねぇ......状況を説明しないと分からないでしょうが」
「そんな悠長な事言ってられないのよ。わかるかしらぁ。貴女の足らない頭で考えてみなさい」
「はぁ!?」

まるで双子の姉妹のように振る舞う二人に布束は言いようのない涙が自然と流れ出していく。
ずっと機械で擬似体験の様子を流されていた布束は改めてこの部屋を見渡してみると何処かのコンピュータルームで緑色のランプが点灯していてゲージが溜まっていくのが表示されておりパーセントは残り3%を切っていた。

「ほ、ほら!よく分かんないけど呆けているみたいよ!だから早く外せば良かったのよ」
「脳波も安定していたから平気よぉ。目覚めて邪魔されたら面倒よねぇ。第一、貴女の方から『ゼツと一緒に居た子』って言っていたわよね?それで簡単に解放すると思ったのかしらぁ?」
「それはそうだけど......」

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