暁 〜小説投稿サイト〜
とある科学の傀儡師(エクスマキナ)
第92話 懇願
[1/6]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
例えばの話をしましょう
ガンを完治する治療薬の開発のメドが立ったとして、それにはモルモット二万匹の実験データが必要だとしたらどうだろうか?

貴方はその実験は仕方ない事だ
それで多くの命が助かるなら
と考えるだろうか?

同じ命なのに?
人間を助ける為にモルモットが犠牲になって良い理屈なの?

人間1人自然分娩で産まれる日数は約280日
モルモットは大体59〜72日

産まれるまでの日数が違うから
人間じゃないからセーフだとか
そこに正義があればやるべきだとか様々な意見があるだろう

人間は簡単に増えないから実験に使ってはいけない
モルモットは人間の4分の1 の日数で増えるから実験に使って良い
簡単に造り出せるものは簡単に壊して良い

そうやって考えてきた。
考えないと自分の立ち振る舞いの根幹が崩れていくかのような気がした。
正義と宣っておきながら結局は自分を慰める為の安心して職務を全うする為の建前だ。


外の空気は甘いのでしょうか
辛いのでしょうか

外部の空気はおいしいと教わりました
ミサカは甘い方が好みなのですが
とミサカは自身の好みを吐露します

世界とは......こんなにもまぶしいものだったのですね


あの時から彼女達を造り物とは思えなくなってしまった
世界が歪んだ醜いものしか見えていなかった私よりもずっと人間らしいと思ったから
不気味の谷すら突破した人形は人形足り得るのか......
あるいは人形は人間に慣れるのか
生きる為に何もかも捨ててきた人間は人形になるのか
周りから宣告されたから人形なのか

自分の立脚点が分からなくなっていく。
感情を切り離した筈の彼女達に理性で判断していた私を大きく揺さぶった。
それは幾らでも解釈出来るし、なんとだって言い訳が出来る。
論文や書籍で読み飛ばされる注釈やコメマークでただ一文
『※例外や諸説あります』だけ書いていれば歴史的に認められる。

幼少期からあまり気にも止めないで読んでいた文献の端っこにある一文の存在に出逢ってしまった。

『彼女達はモルモットであり、感情はないに等しい』
※例外や諸説あります

この※で纏めるにはあまり馬鹿馬鹿しく非情に観えた。
長い人類の歴史の中でこの文言だけで片付けられた被験者、実験者が数多存在した筈。
彼ら科学者が流した葛藤の涙は当たり前として現在の技術を支えている。

私は初めて科学者としての壁に......
私『布束砥信』は研究者として相応しくない感情を想い出してしまった。

ゼツ達の策略によりヘッドギアを装着された布束は彼女達と同期していく。
受けた痛み、流した血
激痛からの冷や汗
口から上がる呻き声
出血を止める為に抑える腕
寒さ

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ