空気の世界
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キーンコーンカーンコーン。
休み時間が終わった事を告げるチャイムが鳴りました。
「じゃあまたあとでね」
と、手を振りじゅっちゃんは自分の席へ戻って行きました。
教室の外にいた人たちがぞろぞろ入って来て自分の席についていきます。ああ…やっぱり四十人は多い。
全員席に着いたあとから、あたりを見まわしてみると、ちらほら見知った顔もいました。まあ、じゅっちゃん以外全員、顔と名前だけ知っているというだけですけどね…。
数分後。やってきた担任の先生と思われる先生が教室に入って来ました。女の先生でした。見た目年齢でいうと三十代後半か四十代くらいでしょうか?
これはあとから知った話なのですが、先生もまたわたしたちと同じくらいの子供を持つお母さんらしいです。自分の家庭もあって大変な先生さんです。
一通り説明みたいなことが終わり次に行う事と言ったら、新しい先生 クラス 定番ネタ 自己紹介タイムです。
わたしが一番嫌いな時間の始まりです。地獄の一丁目です。
なんで自己紹介なんてしないといけないのでしょう。別にみんなのことなんて興味ないです。みんなもわたしのことなんて興味ないはずです。逆に興味津々なんて言われたらドン引きです。
前の子達が軽々と自己紹介していきどんどん自分の番が迫ってきます。
ああ…嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。この世界からどうにかして逃げられないかな。
頭が痛い?
お腹が痛い?
おトイレに行きたい?
それっぽい理由を色々考えて案を出してみたけど、どれも微妙です。
「宜しくねー。じゃあ次は―さん!」
時間オーバー。タイムアウト。時間切れです。わたしの番が来てしまいました。
椅子から立ち上がります。
みんなの目線がわたしに集中します。見ないで お願いだから わたしを見ないで_
「綺麗な瞳」
「……ぇ」
緊張で頭の中が真っ白になったわたしに先生がかけた言葉は意外なものでした。
「―さん。貴方とっても綺麗な瞳をしているわね。翡翠色の瞳なんて初めて見たわ。……もしかしてハーフ?」
「ぇ……あ…はい」
「やっぱり!」
どんなーどんなー。見せて見せてー。みんなが騒ぎ出します。初めてパンダを見たちびっこのように。ああ…うるさい。うるさいです。
椅子に座り直してわたしはまた机にうつ伏せになり、瞼を閉じて自分の世界にこもります。
「恥ずかしがり屋さんなのかな〜?」
「あはは」
外の世界からわたしをからかう声が。聞こえない。聞こえない。わたしには何も聞こえません_。
だからわたしに話しかけないでくださいっ。わたしは空気でいいですから…。
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