第四十話 結婚前
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ラ・ヴァリエール公爵の館。
屋敷ではメイドや召使いといった屋敷の住人が、総出で一人の少女の名前を呼んでいた。
「ルイズ、ルイズ、何処へ隠れたのです。いい加減に出てきなさい!」
カリーヌ夫人もラ・ヴァリエール公爵の三女、ルイズ・フランソワーズの名を叫んだ。
6歳になったルイズは、カリーヌ夫人らの英才教育を受けたが魔法に関しては、全く効果が見られず爆発ばかり起こして、その度に叱られるといった事を何度も繰り返していた。
そして今回の様に度々姿をくらまし、ラ・ヴァリエール公爵家の人々を困らせていた。
「ルイズ様にも困ったものだ」
「本当に……カトレア様が来週には結婚式だというのに」
「そのルイズ様だが、最後までご結婚に反対されていたそうな」
「困ったお方だ。魔法も上手く行かず、爆発させては部屋や庭園を滅茶苦茶するお陰で仕事が増えるばかりだ」
「今日の仕事が残っているというのに、仕事そっちのけで探さなければならないとは」
「こうしていられん、早く探さなければ仕事に戻れないぞ」
「仕事が遅れれば旦那様に叱られる……」
家人達が愚痴を言いながらもルイズを探していた。
そのルイズはというと……
ルイズは『秘密の場所』と呼んでいる中庭の池に浮かぶ一艘の小船の上で涙に濡れていた。
「うううっ、嫌い嫌いみんな嫌いよ」
ルイズは悲しかった。毎日毎日、魔法の練習をしても失敗ばかりでその度、母に叱られ召使達には陰口を叩かれる。そんなルイズを優しく慰めてくれたのは姉のカトレアだけだった。
その、大好きなカトレアが……『ちいねえさま』が、結婚して屋敷を出ると聞きルイズは絶望した。
(ちいねえさまが居なくなったら。一人ぼっちになっちゃう!)
そして、一人になったルイズは、肉親からも家人からも嫌われ見捨てられ、暗い部屋の中で一人寂しく老いて死ぬのよ! ……と妄想するようになった。
小船の上でグスグスと鼻をすすっていると、ルイズに影が差した。
「やっぱりここだったのねルイズ」
「……ちいねえさま」
カトレアは『レビテーション』で空中に浮き、小船のルイズを見下ろしていた。
「ちいねえさま、どうして……」
「トリスタニアに行く前に、ゆっくりルイズとお話がしたかったのよ」
「ちいねえさま……」
「ルイズ、一緒に乗っていいかしら?」
「あ、はい、ちいねえさま!」
ルイズは、グシグシと涙にまみれた顔を、服の裾でぬぐった。
「っと」
カトレアの魔法のコントロールは相変わらずだが、今回は綺麗に小船に乗れた。
「ちいねえさま、わたし……」
「ルイズ。何が悲しくて泣いていたの? お母様に怒られたか
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