巻ノ百六 秘奥義その二
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「そう書いてあった、だからな」
「これからもですか」
「寝ずにですか」
「修行を続けられますか」
「寝られる間も座禅に励み」
「そのうえで」
「もう三日になるが」
しかしというのだ。
「果たして何が出て来るか」
「それはまだわかりませぬか」
「修行をはじめられて」
「そのうえでも」
「まだな、だが続けていく」
この厳しい修行をというのだ、見れば幸村の顔には疲れがある。しかしその目は生気に満ちている。
その目でだ、彼は十勇士達に言うのだ。
「このままな、そうすればな」
「必ず、ですな」
「倒れなかった時は」
「殿も至りますか」
「秘奥義に」
「その様じゃ、ではこのまま続けるぞ」
こう言ってだ、そのうえでだった。
幸村は身体も激しく動かし学問も行い座禅に専念した。それを一週間程続けているがその彼を見てだ。
伊佐は義兄弟達にだ、夜に話した。
「禅の代接心の様な」
「あれの様じゃ」
「兄上もそう思われますね」
「うむ、あれから多くのものを得られるというが」
禅宗の僧達はだ、清海も言う。
「それを思わせるな」
「そうした修行ですね」
「信じられぬことはじゃ」
根津が腕を組んで言うことはというと。
「殿はあの様な激しい修行をされてもな」
「倒れられぬな」
望月が根津に答えた。
「むしろ生気がみなぎっておられる」
「それが凄いな」
「しかしあのまま続けておられるとじゃ」
海野が言うには。
「倒れられるぞ」
「食も節制しておられる」
筧はこのことを指摘した。
「それではな」
「如何に殿といえどもな」
「倒れられるな」
「そうなってしまうわ」
「確かに殿は我等と同じく並のお身体ではない」
穴山も言う。
「忍の者の中でもな」
「そうじゃな」
由利の言葉にも応えた。
「あれだけ頑健な方はおられぬ」
「我等以外にな、しかしな」
「あのままではな」
「倒れられるぞ」
「しかし倒れられぬならか」
猿飛も神妙な顔で言った。
「秘奥義に至れるか」
「一体どうした秘奥義なのか」
霧隠はこのことが気になっていた。
「果たして」
「それも気になるのう」
「全くじゃ」
「ううむ、どういった術なのか」
「果たして」
「あそこまでの修行を経てとは」
「どうったものやら」
十勇士達は気になっていた、それは大助も同じで修行を続ける父を見て彼の母に対して言った。
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