第五章 トリスタニアの休日
第一話 その男執事?
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汚れ。今はどちらかと言えば灰色に見える。そこらの平民の平均的な服装だ。しかし、その中身は絶対に平民ではないだろうと女は確信する。
「嫌がっているだろう」
根拠の一つは、服の上からでも分かる程に鍛え抜かれた肉体。
二つ目は、高い位置にある顔から放たれる。直接向けられている理由ではないにも関わらず寒気を覚える程の鋭い眼光。
絶対に堅気ではないだろうと思われる男が、自分の腕を持つ金髪男の手を掴んでいる。金髪男はまともに男の鋭い眼光を受けたことから、へなへなと腰を抜かし地面に尻もちを着いている。
ダラリと地面に腰を落とした金髪男が、ガクリと首を垂らしている様子を訝しげに思ったのか、男が顔を覗き込んでみると、どうやら気絶していたようだ。男が手を離すと、べしゃりと金髪男が顔面から地面に倒れる。
「……何か悪いものでも食ったのか?」
「いや。あなたの目が怖くて気絶したんじゃないの」
人差し指で頬を掻きながらポツリと呟くと、後ろから士郎に声を掛けてくる声があった。それは、金髪男に腕を掴まれていた少女だった。金髪男に掴まれていた腕をはたきながら、少女は楽しそうに笑っている。
「そこまで怖い目をしてたか?」
「ものすっごく怖かったわよ。横目で見てるだけでも怖かったもん。真正面から見られたらそりゃ気絶もするわよ」
「……そうか」
微かに肩を落とす士郎の様子に、少女はますます笑みを濃くする。
「でも、ありがとね。おかげで助かったわ。何か御礼がしなきゃ」
「ん? 御礼? いや、別にい――」
「いいじゃない。このまま帰られちゃ、こっちの気が済まないのよ。いいから来なさいよ」
「お、おい」
士郎の腕を取った女は、その腕を自身の豊かな胸に挟むように抱きしめる。大胆な少女の態度に、焦った士郎が手を引き抜こうと腕に力を込めると、
「何やってんのよシロウッ!!」
「グハッ!」
服をはためかせながら飛び掛ってきたルイズのドロップキックを腰に受けた。
何とか踏みとどまった士郎が、慌てて振り返ると、髪を逆立てたルイズがそこにいた。先程のしおらしい態度は鳴りを潜め、猛々しい様子を魅せている。今にも火を吐きそうなルイズの様子に、どうやってこれを落ち着かせようかと頭を捻る士郎に対し、服を引っ張りながら声を掛けてくる者がいた。
「ねえ。この子誰?」
「わたしはシロウのごしゅ――」
「妹だ」
「えっ?」
「へぇ……」
ルイズの声に被せるように士郎が口を開くと、ルイズは疑問の、少女は面白がるような声を上げた。
慌てた様子で見上げてくるルイズに対し、士郎が何かを伝えるようにじっと見つめると、ルイズは何かを感じ取ったのか、何も言わず黙り込んでしまう。何やら見つめ合う二人を、先程とは意味を異にす
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