第五章 トリスタニアの休日
第一話 その男執事?
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どろもどろに言い訳をするが、
「もっ、もうしないわよ。だって、ねえ。ほら、ちゃんと反省してるし」
士郎は全く信用してない目で見詰めるだけであった。
もうしない。
反省している。
何度聞いたことだろうか……。
そんなことを言って、しおらしく反省していたことから、金を渡してしまい……。
と、遠坂……スるどころか借金まですることは無いだろう……。
「だからって貸す理由にはならない」
腕を組んで一度息をつくと、士郎は講義を行う教師のようにルイズにお金の大切さについて説明を始めた。
「いいかルイズ。公爵家の娘であるお前にとってはそんなに大した金額には思えないだろうが、四百エキューと言えば、一般家庭が一年は優に暮らせるだけの金額だ。一体どれだけの血と汗と努力の末に手に入るのか……だがルイズ。働いたことのないお前にはその実感が余りにも無さ過ぎる。だからここでお前に安易に貸すことがお前のためになるとは思えない。いい機会だ。情報収集に必要な金は、自分で働いて稼げばいいだろう。フォローぐらいしてやる」
「そ、そんなシロウ……」
目に涙を溜め、震えて見上げてくるルイズに、ほだされることなく、士郎は腕組みをしたまま微動さにしない。頑なな士郎の様子に、またもルイズは顔を下に向けると、膝を落として小さくなってしまった。
小さく丸まったルイズを見下ろし、士郎が、さてどうやって働かせるかと悩んでいると、
「ちょっとやめてよっ! これ以上しつこいと衛兵を呼ぶわよっ!」
「呼んだらいいさ。知ってるだろ。僕はそれなりに有名な商家の長男だ。この辺りの衛兵には顔が効く。例え呼んでも意味はないさっ! さあっ! 今日こそは僕に付き合ってもらうよっ!」
通りで若い男女がいささかいをしていた。一人は太い眉が活発な様子を伺わせる、長いストレートの黒髪を持つ美少女と言ってもいい可愛らしい少女。もう一人は耳に掛かる程に伸ばした金髪を持つ、メタボリックな体型のお世辞にも美男子とは言えない二十歳前後の男。
往来の真ん中で騒ぐ二人を、周囲を歩く者は関わり合いにならないよう遠巻きに避けて通っていく。女は男から逃げようと、掴まれている腕を必死に振っているが、男の手はビクともしないようだ。男は女の必死な様子をニヤニヤと見下ろしながら、ずるずると引きずっていく。女は助けを求めるように周りを見渡すが、視線が合わないよう逸らす周りの者の様子に悔しげに顔を歪めた。そして、いやらしい目で見つめてくる男に何かを言おうと口を開き、
「何をしている」
横から割り込んできた声に遮られた。虚を突かれ、目を瞬かせながら声が聞こえてきた方向に顔を向けると、そこには見窄らしい格好をした男が立っていた。元は黒かっただろう服は所々色あせ、
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