第五章 トリスタニアの休日
第一話 その男執事?
[4/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
顔をせずに頷く士郎。
「……ていうかシロウ」
「なんだ?」
「何時までその格好でいるのよッ!!」
「まっ待てルッゴフ」
キュルケに跨がられた形で仰向けに倒れている士郎に対し、ルイズが書簡を投げつけた。書簡は唸りながら士郎の顔面に直撃する。キュルケが身体の上に乗り、身体を動かせなかった士郎には避けることは不可能であった。
「……なんでさ」
その後ルイズは半強制的にシエスタ達を部屋から追い出すと、書簡に入っていた手紙を士郎に渡した。
手渡された手紙をざっと見た士郎は肩を竦める。
「次の任務は情報収集か」
「そうよ。それも身分を隠してのね……任務はいいけど……地味ね」
「地味だが重要なことだぞ。些細な情報が生死を分けることもある。地味だと言って手を抜いていると後悔することになるぞ」
厳しい声で士郎が忠告すると、肩を縮めてビクリと身体を震わせたルイズが、士郎から顔を背け、
「そっ、それぐらい分かってるわよっ! もう、それよりさっさと出るわよ士郎。馬車とかならともかく、身分を隠すから徒歩で行くことになるわ。行き先は王都だから二日は掛かるわね」
帰郷のために用意していた荷物を入れ替え始めた。
背を向けバタバタと荷物の用意を始めたルイズに同じように背を向けると、士郎も準備を始める。
「了解」
魔法学院を出発して二日後。王都に着いた士郎達は、まず手形を金貨に換えこれからの活動資金を手に入れた……はいいが、次の行動が問題だった。身分を隠さなければならないのに、この格好はまずいと、平民が着るような服を買いに仕立て屋に行ったところまでは良かったのだが、士郎がここで服を買うか、それとも布を買って自分で作るか思案している間に、ルイズの姿が消えてしまったのだ。時間が掛かかり過ぎるかと思い、服を買おうとルイズに声を掛けようとしたところで、ルイズがいなくなっていることにやっと士郎は気付き。慌てて周りを見渡すも見付からず、仕立て屋から出ると、そこで何かの建物に入ろうとするルイズの姿を見付けた。
そこからが大変だった。
慌ててルイズの後を追って、士郎はその建物、えらく騒がしい居酒屋の中に入る。居酒屋の中は古く汚かったが、小さな出入口に対し中は広かった。居酒屋に入った士郎が辺りを見回すと、居酒屋の一角で設えられた賭博場を見付けた。背筋を襲う寒気と岩を飲み込んだかのような胃に感じる重さ。凄まじい勢いで高まる嫌な予感に、無意識の内に全身に強化を掛け、全力で賭博場に飛び込んだ士郎が目にしたものは、
「いやあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ……」
頭を両手で挟み、汚れた床に膝を落とし悲鳴を上げるルイズの背中
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ