第五章 トリスタニアの休日
第一話 その男執事?
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確認したスカロンが、大きく手を叩き、自分に視線を集中させると、再度大きく声を上げた。
「はいはいルイズちゃんの紹介は無事にすんだわね。それじゃあ次はルイズちゃんのお兄ちゃんを紹介するわね」
ルイズの兄とスカロンが口にした瞬間。時が止まったかのように一瞬拍手が止むと、次の瞬間には近くの者と一斉におしゃべりを始めた。
「え? お兄ちゃんってあのお兄ちゃん?」
「お兄ちゃんっていったら一つしかないでしょう!?」
「男? 男なの?」
「うっそ! 男の人がこの『魅惑の妖精』亭で働くのッ!?」
一瞬に喧騒に包まれる店内を、スカロンの一括が制圧した。
「静かにしなさいッ! いい? ルイズちゃんは親が博打で作った借金で売られそうになったところを間一髪お兄ちゃんと一緒に逃げてきたの。だからちゃんと優しくしてあげなさいよ! いいわね!」
「はいっ! ミ・マドモワゼル!」
一瞬で静まり返った店内を見回し、ニコニコと笑ったスカロンは、どこぞの司会者のように大げさな仕草で店奥に手を伸ばす。スカロンの手の動きに導かれるように、少女達の視線が一斉に店奥に移動する。
シンっ、と静まり返る店内。誰かのゴクリと唾を飲み込む音が店内に響き。男が一人店の奥からゆっくりと歩いてくる。
「わぁ……」
「へぇ……」
鷹の様な眼光を放つ鋭い目。
整った鼻梁。
浅黒い肌。
所謂執事服に身を包んだ肉体は、服の上からでも分かるほどに鍛え抜かれ。現れた男を見た少女達の口から、感嘆の声や驚きの声が漏れた。
威圧感を感じてしまい、思わず腰が引けてしまいそうになった少女達であったが、じっと見ている内、男の扱いに慣れた少女達はある事に気付く。
「あ」
「ふぅん」
「ふふ」
物理的な圧力を感じる程強い眼光の中に、戸惑いや照れがあることに。
その事に気付いた少女達の顔にニンマリとした笑みが浮かび、美味しそうな料理を目の前にしたかのようにぺろりと舌で唇を舐めた。
「ッ」
獲物を狙う獣のような目つきに変わった少女達を見て。今度は執事……士郎が思わず腰が引けてしまいそうになった。そして、それに気付いた少女達の笑みがますます濃くなる。
士郎の頬を汗がつたい、ゴクリと喉が鳴った。
「士郎と言います。よろしくお願いします」
流れるような仕草で、胸に手を当て腰を曲げる。
執事の見本と言うべき礼をする士郎は、何とも言えない一種の色気を漂わせ。ルイズも思わず見とれてしまう。店内の少女達の喉がゴクリと鳴り、目つきが鋭く変化した。
「あ、あの」
「ししししししシロウちゃあああんっ!!」
「うおおっ?!」
周りの様子に戸惑い。何か言わなければと士郎が口を開いた瞬間、顔に影がかかる。首を刈ら
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